Congratulation!! 💐

上月くるを

Congratulation!! 💐





 世界的な音楽や美術のほかに、小洒落た大人のバーの街として知られる高原都市。

 なかでも蔵通りの『ソルティドッグ』には上品な雰囲気を好む固定ファンが多い。


 横浜出身、口髭が粋なマスターが格好よくシェイカーを振ったカクテルは絶品で、木曾檜の一木造りのカウンターに、一分の無駄もない所作で、すっと出してくれる。


 いたって寡黙な質で、接客業なのに大丈夫? 心配になるほど無駄話はしないが、しつこい連れ(接待)に閉口していると、さりげなく助け舟を出してくれた。(笑)

 

 仄暗い照明に溶けたスローなジャズが、止まり木の女性客のふくらはぎを撫でる。

 地元客しか知らない、そんな隠れ処のような店で、何度の逢瀬を重ねただろうか。


 たいていはヨウコさんが先に着き、多忙なレイラさんは大慌てで駆けこんで来る。

 やはり木曾産の分厚い扉の鈴がちりんと鳴るたび、入り口を振り返る癖がついた。

 


 

      🍸




 むすめのような年齢の彼女と初めて会ったのは初夏のころだったと記憶している。

 新卒記者は「あそこの社長に鍛えてもらって来い」(笑)そう命じられたらしい。


 正直、都会の高級住宅地育ちのお嬢ちゃんに零細企業のなにが分かると値踏みし、適当に上辺のことだけ話して帰すつもりだったが、意外に熱心に食らいついて来る。


 そして、掲載記事を見て驚いた、まさに掌編小説だ、センス抜群の写真ともども。

 年齢差はあるが、感じたり考えたりする起点が一緒なので、すぐに親密になった。


 並んで歩いていると男性の目を集める美貌&スタイルなのに、派手な服装や化粧をきらい、長い黒髪は無造作にひとつに束ね、社会の不条理に憤っては目を潤ませた。




      🌐




 数年後、遠隔地に転勤になってしばらくしてから、とつぜん退職の連絡が届いた。

 一念発起して海外の大学院で学び直し、ゆめだった国際貢献の道を目ざしたいと。


 狭い島国に埋もれさせるのは、いかにも惜しい人材だったので、心から応援した。

 みごとに志を貫いたのちは、赴任先の世界各地から長文のメールを送ってくれた。




      👰




 きょうはお昼から、その年下の友だちの結婚披露宴が首都圏のホテルで行われる。

 大事な彼女の後半生を託す新郎は、花嫁と同じ道をあゆむヨーロッパ人の偉丈夫。


 レイラさん、本日は本当におめでとう!! 巡り会った最愛の彼と末永くお幸せに。

 あのころ、ふたりでよく歌ったみゆきさんの曲を想って、いまからうるうるだよ。


   ヾ(@⌒ー⌒@)ノ (ノД`)・゜・。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ (ノД`)・゜・。


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