奥さんにいいわけする話

脇役C

奥さんにいいわけする話

夫婦げんかは犬もくわないと言う。

何でも食う犬でさえ見向きもしないらしい。

他の人からしたら、なんでそんなことでと思うことが、たくさんケンカのもとになる。

他の人だったらしない。


夫婦とは不思議なものだ。


その中でもあるあるなのが、電気の消し忘れ。


そう、俺は電気をつけっぱなしにする。

いたるところすべて。


「ひっちゃん! またトイレの電気消し忘れてるよ! なんで忘れちゃうの!」

「ごめんゆっちゃーん」


特に理由はない。

理由がないからこそ、直すのが難しい。

ちなみに、本人的にはめっちゃ直そうとしてる。

つもり。


「でもトイレの電気代なんて微々たるものでね?」

「ちり積も! スイッチ押すだけなんだからやって!」

「そのスイッチ押すだけがいかに難しいか…」

「言い訳は見苦しいよ!」

「ごめんゆっちゃん~」


ケンカというか俺が怒られているだけである。


なぜ電気を消すというだけのことができないのか、自分でも不思議だ。

最初の3日間は継続するのだ。

しかし、そのあとが続かない。


今回の奥さんは結構なお怒りムードだ。

申し訳ない。

ただ、マンガだったらプンプンのプンという擬音語が入る。

かわいいんだよなあ。


「聞いてるの?」

「聞いてます」

「じゃあなんで直らないの!?」


見た目がかわいくても、本人に多大な迷惑とストレスを与えてしまっている。

もちろん100%俺が悪いので、なんとか怒りをおさめてもらいたい。


ひらめいた。


「ゆっちゃん」

抱きしめる。

「怒らないでえ〜」

耳を耳ですりすりする。


「んふふふ」

奥さんは耳が弱い。


「こら! ずるい! こうしたら絶対許してもらえると思ってるでしょ!」

奥さんはもう笑ってしまっている。


「違うんよお、反省してるんよお」

「絶対反省してないでしょ!」


そう言いながら、奥さんは頭をなでる。


「もお! ひっちゃんはかわいいんだから!」


そのあと罰金刑500円が科せられた。

いまだに俺は再犯を重ねている。

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