青は青に染まりて

ナナシマイ

青は青に染まりて

 太陽が沈んで、空気や建物や人の肌がぜんぶ青色に染まる。

 まだこんな時間か。彼はそう言う。じゃあいっしょになろうよ、と。

 いいわけないでしょ、とわたしは答える。

 青い彼と、青いわたし。

 その途中にある空気だってもちろん青くて。溶けあうように似た色をしているけれど、光残された輪郭はまだはっきりとしている。

 ためらうわたしの青色を、彼の青色は容赦なく覆い尽くす。たまらないというふうに、さざめいては揺らしてゆく。

 わたしもたまらなくなって、すぐに青い音を鳴らしてしまう。

 ねえ恥ずかしい。

 いろんなところが熱を持つのにわたし、青いままで。

 ちょっぴりばかり悔しくて、彼の青色にわたしの青色を垂らしてみる。

 彼の青色が少しだけ、青く染まってゆく。そのようすを眺めながら心地よくなるわたしの青さ。


 もうこんな時間だ。そう言う彼の青はとてつもなく濃い色をしている。なんて匂いなの。ううん、そうじゃなくて。ついさっきまであったはずの、わたしたちの輪郭はどこへいったんだろう。

 手探りで掴んだ青色。

 もうわたし、あちこちが青くて。

 溶けたらダメだよ。囁く彼の青さに、どうしたってわたしは溶けてしまう。

 でも。だって。

 口をついて出る言い訳はやっぱり青い。交ぜても混ぜても青い。

 溶けたらダメだよ。

 そう繰り返す彼は鉱石を砕くみたいにわたしを砕く。

 顔料になったわたしの青を飲み込んで、彼の内側に塗りたくってゆく。ぼやけかけていた輪郭がはっきりする。だけどそれは重なっていて。

 ああこれでもう、いっしょになってしまったんだ。

 昇った月の青さを奪うように、わたしたちは青くなり続けた。

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