すずらんの花は何も語らない

 シベリアでの抑留体験者の話はこれまでに様々な形で触れてきましたが、この物語は今まであまり触れられなかった女性からの視点で描かれており、非常に興味深く読むことが出来ました。
 本作を読みながらずっと頭の片隅にあったのは、「すずらんの花には毒がある」という言葉でした。白い小さな花が隠し持つ「毒」は、シベリアでの体験をずっと心の奥に秘めて生きてきた主人公と重なるように思えました。

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