第2話
「え?た、旅……ですか?神様達の?」
「神様じゃ無いんやけど……まぁええわ、そ、旅、取り敢えずは世界の果て行きかな」
「世界の果て……聞いたことがあります、始まりの神様達がお亡くなりになった後、三番目の神様が世界が無限に広がる様にしたって、そして、無限に広がる世界の境界線の向こう側は、未だ何があるか分からない暗黒領域だって」
どうやら、ここではその様に話が伝わっているらしい。
まぁ、悪くは無い。
「そんな所だな、で?どうする?親御さんとかは?」
「あ、あぁ、わ、私には父と母と呼べる様な、家族と呼べる様な存在はおりません神様、私は家族の顔が分かりませんがきっと地獄に落ちたことは知っています、ねぇ、神様、私の親は地獄に落ちたのでしょう?」
「俺は神様なんてもんじゃ無いが?」
少女の濁った瞳に吸い込まれながらも、俺は何とか正気を保って、答えた。
「またまたご冗談を、人のものを盗んだ私に罰を落としたのでしょう?」
そうして罰を償わせ、穢れた私をお救い下さい。
そう言わんばかりだった。
何がこの子をこれ程までに狂わせてしまったのだろうか。
いや、間違いなく俺のやりすぎも一つ噛んではいるだろうが、それにしても、である。
私がやるわ。
あそう?じゃあ頼んますわ。
「ちょいと失礼、目を見て?私の声に耳を傾けて?大丈夫だから」
ヒトミは少女の瞳を見つめると、暫くの間黙り込むと、俺に呟いた。
「この子には、慈悲が必要なのよ、私達が愛を与えれるだけ、愛を注いであげましょう?ねぇ?ゼロ?」
やりすぎた結果が結果だけどな。
だが、彼女が言うことならば、それは間違いないだろう。
「ありがとう……でも、世界の果てへと着く前に、どうかありったけの愛を、知ってほしいかなぁ」
「神様?」
「神様は辞めなさい、せめて、名前で呼んでちょうだいよ?」
そうだな、それが良いだろう。
名前は、今この瞬間も間違いなく大切なものだからな。
「それでは改めてお名前を、お聞かせ願えるかな?」
「イーヴァです……」
「イーヴァ、良い名前じゃ無いか、ようこそ我が旅団へ、今日は良い旅立ちの日だ、広がる空に、さざめく波に、黄金に光る大地、そう思わないか?」
「罰は、もう良いのですか?イチヤ様?」
俺は胸いっぱいに吸い込んだ空気を吐き出すと、イーヴァを振り返った。
イーヴァは不安そうな顔をして、こちらを見つめていた。
その瞳は先ほどと変わらず、こちらを飲み込みそうなほどの深く、暗く美しい青だった。
「心配するなや、罰を受けなくとも救われる生き方はあるて、気楽に行こうで、この先は長いしや?」
「私は……」
「任せろ!お前は絶対に幸せになる!まぁ、あんな事した後で言うのも何だが、アレぐらいが余裕でできる俺なんや、任せぇな?」
「ならば、手を取る前に一度、使徒となる前に人としてお祈りをさせて下さい、あぁ、どうかこれより先が光に満ち溢れん事を」
イーヴァは一度手を合わせて祈ると、差し出した俺の手を取った。
そうして俺達は、最初の戦利品と新たな旅の仲間と共に、次の世界へと脚を向けようとした時、レイがある事に気づいた。
旅先には何か乗り物が必要じゃ無い?
それこそ、貴方がさっき木っ端微塵にした美しい船のような、ね?
確かに、それはそうだ。
「ちょっと待ってて?今、足を直すから」
「ねーちゃん、さっきから黙って見たたけど、ええ加減にしてくれん?」
「まぁまぁ、ジロちゃん、すぐに終わるからさ?」
「ちゃん呼びはやめぇて」
俺が木っ端微塵にした黄金の船にヒトミが触れると、まるで時間が巻き戻ったかの様に船体が修復されて、洞窟内の岸辺に進水した。
流石ヒトミだな。
「当然!コレぐらいはできて当然!」
「やはりすごいです、ヒトミ様!」
「全く、様は付けるなっつったろ?」
「にーちゃんは調子乗りやから、あんまり煽てたらあかんで?」
やかましい事を言うジロウを蹴飛ばすと、俺は二人を脇に抱えて船に飛び乗った。
それじゃあ、私は中を広げてくるから、操縦はよろしく。
行先はワールドアイテムが示してくれでしょ?
俺は苦笑いをして、イーヴァから拝借したコンパスを手のひらに載せた。
コンパスはクルクルと回転していたが、前方に日輪の輪を広げて別の世界の入り口を作ると、勢いのある追い風と共に、方角を示した。
「それでは諸君、改めて出航である!錨を上げたまえ!帆を下ろしたまえ!我らの旅路は我が日輪に誓って、栄光に満ち溢れたものとなるだろう!」
俺の言葉にジロウとレイは呆れて、イーヴァは聞いていないかの様に、手を合わせて祈りを捧げていた。
まぁ良いさ。
と、少し寂しい気持ちになったが、順調とは言わずとも俺達は無事最初の世界でのワールドアイテムを入手する事が出来たのである。
さて、次の行き先は……。
見えた、懐かしい顔と、竜種が。
どうやら、旅はまだまだ楽しくなりそうだ。
裏表の0と1から生まれた2〜目指すはゴール〜 @TENDUUI
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