音を探して

指先が痺れるような心地よさに

私は歌声をのせる


深い深い部分まで自分を曝け出すこの行為は

願いに近く

いつまでも距離が縮まる事ない芸術だ



「お疲れ様、1杯どうぞ」



バーテンダーに声をかけられ

私はアコースティックギターを置くとカウンターへ座った


サザンカンフォートをトニックウォーターで割ったものを一気に煽る



ライブの後はいつもこうやって、あの時代を思い出す。




気がつけば1人でも生きていけるようになっていた


それは喜ばしい事だったのだろうか?



満たされてはいけない


それは私の正義だった。



あの人は今の私の歌を聴いてどう思うだろうか?

あの優しい微笑みをくれるだろうか?



世界の隅の方で新しい音が鳴った気がした。



「ごちそうさま」


私はBarを後にする


音を探しに行こう



指先が痺れるような心地よさに

私は歌声をのせる

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