もちろんストーリーは素敵ですとも、那智 風太郎さんの作品ですもの。あたくしが着目したのは、ものの言葉、ことの記憶。有田焼の深皿、焦げ付いた鍋、見つからないピーラー、家庭科の調理実習。こういうものやことの積み重なりがとても雄弁なんですの。読み手の記憶に触れるものごとが雄弁に語るからすべてに臨場感があるのですわ。あたくし、お部屋の匂いや肌の温かさまで感じられるように思いましてよ。
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