「犯人はお前だ!」「ちがいます」

下垣

犯人は誰やろうなあ

 俺はそこそこ名のある高校生探偵。今日は孤島に住む変わった金持ちが主催したパーティに招待されて参加した。しかし、そこで殺人事件に巻き込まれてしまうことになる。1人、1人とまた死んでいく。そして、最後に俺と友人の2人が残った。いや、犯人はお前かーい!


「お、おい。犯人は誰なんだよ。名探偵なんだからわかるだろ?」


 こいつ、この状況でしらばっくれるつもりか?


「いや、犯人お前だろ」


「は、はあ? 証拠は? 証拠はあんのかよ!」


「残念だよ。まさか友人のお前が犯人だなんてな。まあ、自首扱いにしてやるよ」


「だから、俺を犯人扱いするんだったら証拠を出せ!」


 こいつ……まだ言うか。証拠とか……この状況でいるか?


「あのなあ、俺は犯人じゃない。俺は第1の殺人と第2の殺人の時に完璧なアリバイがある」


「うん、それはわかる」


「そして、アリバイが全くない容疑者はお前しかいない。ってか、お前以外死んでんだよ!」


「……あれま!?」


 「あれま」じゃねえよ。気づいてなかったのかよ。


「というわけで、犯人はお前しかいない。Q.E.D.」


「ま、待て。俺は本当に犯人じゃないって」


「じゃあ、誰が犯人なんだよ。全員状況的に他殺以外ありえないって俺が推理したばっかだろ。消去法で! 客観的にも! お前しか! 犯人はいないんだよ!」


「お、おい! 俺たち仲間だろ。信じてくれよ! 俺がやってない証拠はないけど……それでも犯人は俺じゃないんだ」


「見苦しいぞ! これ以上、俺を失望させないでくれ。お前を信じているから、信じていたから、俺は今こんなにも辛いんだ! 殺してしまった命はもう元には戻らない。なら、せめて、罪を認めて償うために一生を捧げるんだ。それが、友人であるお前に言える最後の言葉だ」


「俺は……本当にやってねえんだよ!」


「ええ、私もそう思います」


「「え?」」


 あれ? もう1人いた? なんか、エプロンが血まみれのメイドがいるんですけど。


「あ、あの……あなたは?」


「私はこの屋敷のメイドです」


「は、はあ。それで、今までどこにいたんですか?」


「ちょっと色んな証拠ものを処分してました」


「…………」


「ほら、俺は犯人じゃなかっただろ! 明らかに犯人はこの女だ! おい、どうしてくれんだよ」


「………………」


「なんとか言えよ!」


「あ、えーと……まあ、仕方ない。名探偵も人間だ。ミスをすることもある」


「は?」


「あのなあ。冷静に考えてみろ。事件って言うのは複雑なものなんだ。例えばな。色んな人間がいろんな角度で証拠を検証して起訴するかどうか決めるだろ? そして、裁判になったら、弁護士が検察の立証が本当に正しかったのかを検証する。司法試験に合格したエリートですら、数人が集まって事件の全貌を明らかにするんだよ」


「だから?」


「たかが高校生1人に事件の全てが解決できるわけねえだろ!」


「開き直んな!」


 こうして、この事件は解決した。しかし、俺と友人、いや、元友人になってしまった彼との亀裂は永遠に解決しない。なんとも後味の悪い終わりとなってしまった。

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「犯人はお前だ!」「ちがいます」 下垣 @vasita

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