魔法薬が爆発した!メモがない!師匠は怒った!

葛鷲つるぎ

第1話

を聞きましょうか」

「は、はいぃぃぃ……!」


 それは全面的に相手に非があることを前提としていた。失敗したことを咎めているのだ。

 レイヤ師匠の圧力に、オーロラは縮こまった。緑やら黄色やらカラフルな髪がチリチリと感情に合わせたように動く。


「え、えっと、ですね、厚底鍋にですね、星のエキスがなかったので、代わりに浄化済みの銀の弾丸一つと、ニガヨモギを十束、それから、つくしの手摘みを十束、サラマンダーのすり潰しを丸ごと入れました!」


 師匠は深くため息をつく。


「どうして星のエキスの代わりといって銀の弾丸が出てくるのです。不老不死の水銀となにか勘違いしたとでもいうの?」


「はい! ニガヨモギだけだと代わりになるかちょっと不安だったので足しました!」


「せめて食べられるものになさい!」

「が、概念的に分かりやすかったんです〜〜!」


 オーロラは健気に元気よく答えたが、雷が落ちてまた縮こまった。


「しかもサラマンダーのすり潰しを丸ごと! 丸ごとって、全身全部丸ごと入れることがありますか! 筋線維の文字が見えなかったの!?」


 そう言ってレイヤ師匠がノートに指さしたのは、内蔵でもなく筋線維。

 だからこれまた難しい魔法薬だったのだ。オーロラが作ろうとしたものは。


 未熟な者には、星のエキスと同じかそれ以上の難易度だ。


「み、見落としてました〜〜!」


「はぁ〜〜……」


 レイヤ師匠は頭が痛いとばかりに、額に指先を添えた。何から言うべきか。


「まず、星のエキスがないならスッパリ諦めなさい。次に、代わりのものを作ろうとするなら、ちゃんと、食べられるものを! 水銀も銀も身体に毒です! その上ニガヨモギを入れるというのなら、特定の星形の電飾から抽出したエキスの方がまだ見込みがあります。効果のほどは期待できませんが」


 実のところ代替の品を入れようとするのは、レイヤ師匠としてはあまり怒る理由にならなかった。が、物事には限度がある。


「なるほど! つまり、エキスはエキスのままがですね!!」


「今回の場合なら。それがなぜなのか考察して後でレポートを提出しなさい。今回の事故もですよ!」


「は、はい!」


 オーロラはもう一度縮こまった。


「ところで、代わりとして作った材料、きちんとメモはしてあるのてしょうね?」


 師匠の指摘に、ハッ! と、オーロラは青褪めた。これは本当に、やらかしてしまった。胃がよじれる思いで、口を開いた。


「しし、して、してません……!」


 一瞬、レイヤ師匠が膨らんだかのように見えた。金色の髪がパチパチと光る。

 そうして魔法薬をその場のノリで作ったよりも、どぎつい雷がオーロラを襲った。


「適当に作るにしてもメモは取りなさいと! 実験の基礎から学び直しです!」

「ひえ〜〜! すみませーーん!」


 オーロラはもうこれ以上肩が壊れるというほど、縮こまるしかなかった。

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魔法薬が爆発した!メモがない!師匠は怒った! 葛鷲つるぎ @aves_kudzu

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