777円のレシート

肥前ロンズ@仮ラベルのためX留守

ポルポローネは幸運を運ぶお菓子

 今日はついてない。

 食べたかったお菓子が売り切れだし。キャッシュレスで払おうと思ったら残高がビミョーに足りないし。なんか店員さんの態度悪かったし。

 もらったレシートを見るとちょうど777円。全然ラッキー7じゃないじゃん、と心のなかで八つ当たりする。

 コンビニを出て、目の前のスクランブル交差点を通り抜けようとする。あー、赤になってしまった。そんな感じで、信号待ちをしていると。


「篠原」


 振り向くと、高校時代クラスメイトだった前原がいた。

「前原じゃん。久しぶり。元気してた?」

「うん。篠原も元気そうだね」

 そう言って沈黙。話題がない。


「前原はどこに進学したんだっけ?」

 私が聞くと、前原は「製菓学校」と答える。

「あ、お菓子作るとこ? すごいじゃん。今度食べさせてよ」

 私がそう言うと、前原は、「わかった」と言った。


     ■


「あれって、殆ど社交辞令だよね……」

 昔のことを回想しながら私がつぶやくと、前原――幸ちゃんが、「どうしたの?」と聞いてきた。

「ああごめん。この、ポルポローネっていうの、ください」

「昔からポルポローネ好きだよね、ちーちゃんは」

 恋人になった幸ちゃんは、私のことを「篠原」から「ちーちゃん」に変えていた。

「そーそー。ほら、付き合う前、コンビニで偶然会ったじゃん? あの時も、ポルポローネ買いたくてコンビニに行ったのに、売れきれてたんだよね」

 最も、あの時はポルポローネって名前を知らなかったけど。『ほろほろクッキー』として認識してた。


「じゃあ、お仕事頑張ってね」

「ちーちゃんもね」


 ありがとうございました、という幸ちゃんの言葉を後にして、店を出た私はレシートを見る。

 そこにはあの時と同じように、777円……ということはなかった。


「ま、そんな偶然、そうそうないよね」


 私はポルポローネを口に入れる。ほろほろと口どける。

 大好きな彼のことを思いながら、今日も頑張ろうと思った。

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