アンラッキー7

碓氷果実

アンラッキー7

「アンラッキー7」という、怪談にまつわる怪談がある。

 ある条件を満たす怪談を七つ集めると、その人が消えてしまうとか、異世界に行ってしまうとかいうやつだ。「百物語の小さい版」と言われたが、いわゆる七不思議だと僕は思う。

 どこかの国の都市伝説らしいのだが、僕が調べた限りUnlucky Sevenと呼ばれる都市伝説は見つけられなかった。英語圏の話じゃないのかもしれないし、そもそも嘘かもしれない。

 こういう、何かをすると怖い目に遭うというの話、子供の頃は怖かったが、怪談を集めていくうちにさすがに慣れた。だから、この「アンラッキー7」についても頭の片隅にほんのり残っているくらいだった。

 怪談を集めてもう五年以上になるが、というのがなかなか複雑で、年に一回聞くかどうかというくらい出会わない。

 が、実は、昨日聞いた話がまさにそれで、メモを見返してみると、たぶん、七つ目だった。

 勿論心から信じてはいないし、馬鹿馬鹿しいとも思うのだが、ひとつだけ気になっていることがある。


 僕はこの話を誰から聞いたのか、ということだ。


 この話を知った時、百物語の小さい版と記憶はあるが、それを誰から聞いたのか、全く思い出せない。だが間違いなく人から聞いており(それも大人になってから)、本で読んだ訳ではないはずだ。数少ない怪談仲間にそれとなく聞いてみたら、そもそも「アンラッキー7」なんて話を知らなかった。


 もしや、僕にこの話を教えてくれた人は、条件に合う話を七つ集めてしまい、「アンラッキー7」によってこの世界から、そして僕の記憶からも、消えたのではあるまいか? 


 ――さすがにそんなわけはないと思うのだが、昨日からどうにも首の辺りにゾワゾワとした違和感がある。プラセボかもしれないが、念のためそのというのは誰にも言わないでおこうと思う。こんな話、知らないほうがいい。

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