それは絶望の中の一筋の光

大舞 神

第1話 裸単騎

俺はどこで道を間違えたんだ?


「かっ、かかっ!」


つまらない人生だった。

普通の両親の元に生まれてなんの不自由もなく育った。

それなりの容姿、それなりの成績。友達も普通のやつらばっかりだ。たまに連絡して酒を飲む。それが俺の唯一の楽しみだった。 


「カンッ~~!!」


俺は対面が出した『チーワン』にカンを宣言した。

これで後戻りはできない。

ははは。

人生崖っぷちだってのに……、俺ときたらとんでもねえ馬鹿野郎だ。


「……おい、クソゴミ。 なにをニヤけてんだ、ぶっ殺されてぇのか?」


どうやら俺はニヤついていたらしい。

普段なら目が合っただけでしょんべんちびりそうになるくらい怖いおっさんが怒っている。


「もう一つ! カンだッッ!!」


だけど関係ねぇ!!


どうせこの勝負に負けたら死ぬしかないんだ。

震える手に力を無理矢理力を籠める。

俺はソーズの7、チーソウを4つ手牌から右に移動させた。

これで3つ。三槓子が確定した。

場の空気が変わったのが分かる。


「怖くねぇ、怖くねぇ……」


今俺に流れがきてる!


「死にぞこないがぁッ調子にのるな!」


強い打牌だ。

叩きつけたからという意味じゃない。

生牌。

ションパイ、つまりまだ一枚も場に見えていない牌。

あのおっさんも勝負にきてるってことだ。


「ははは……」


それはプライドか?


「あんた、……ツイてないな? それは、俺の、今日のラッキーアイテムだぜ?」


『乙女座の君のアイテムはラッキー7』


俺はパタンと牌を3枚倒し、おっさんが切ったピンズの7、チーピンにカンを宣言する。


「なにいぃッ!?!?」


これで四槓子(スーカンツ)確定。

俺の手牌はたったの1枚。

裸単騎だ。


「わかってるだろ?」


「は?」


俺の言葉に対面のおっさんが呆けた。


「あんたがパオ。 責任払いだぜ?」


「ッツ!」


おっさんの驚愕に染まった顔が痛快だった。


俺は最後の嶺上牌に手を伸ばす。


「あんたにとってはアンラッキー7だったな?」

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それは絶望の中の一筋の光 大舞 神 @oomaigod

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