第5話 決着

「やっほ」


 そこからは罠のないまっすぐの道で、私は無事すずくんの元へとたどり着くことができた。


「おめでとう。『ホワイトデー・クライシス』クリアだよ」

 すずくんが笑う。

「ワイヤートラップに、本気で心を折りに来る問題。ホワイトデーの余興にしてはかなり本気だったねー」

「まあね。でもここまで本気じゃないと、さっちゃん楽しくないでしょ?」

 彼がそういうので、私は大きく頷いた。

 楽しかった。

 楽しかったし、嬉しかった。

 彼が私のためだけにこんなゲームを作ってくれる、しかもそれが緊張感のあるもの。こんなにも嬉しいことがあるだろうか。


「っていうことでさっちゃん、余興は以上だけどせっかくなのでお菓子もあげる。あい」

 すずくんが両手サイズの大きな箱を手渡してきた。

 なんだろう、と思いながら開くと、特大サイズのマカロンが出てきた。

「デカすぎんだろ……!」

 テンション爆上がりだ。

 やっぱりデカいプリンなどのデカいお菓子はそれだけでテンションが上がる。

「ありがとう! すずくん大好き!」

 私は勢いをつけて彼の胸元に飛び込んで、首に両腕を回した。

「喜んでもらえてよかった」

 すずくんが私の背中に腕を回しながら、言葉を続ける。

「前にさっちゃん、『バレンタインやホワイトデーは、片方だけが愛の大きさを具体化しなきゃいけないから不公平だ』って言っていたよね。おおむね僕も同意。だけどね、君がどんな風に喜んでくれるのかなって考えながら何かを準備する時間ていうのは、それはそれで、とっても楽しくて幸せだったよ」

「……」

 それは私もだった。

 あんまりバレンタインってイベントは好きじゃなかったけど、すずくんのために準備する時間や、それを喜んでくれた顔を見るのは、とても幸せだった。

「これから何十年も一緒にいるんだから、たまにはこういうイベントも悪くないなって。ううん、いいなって、準備しながら思ってた」

「そうだねー。確かに私は前に、バレンタインが好きじゃないって言ったけど。でも、今年のイベントでちょっとだけ思い直したかも。ありがとう、すずくん」


 私は心の底からの感謝の気持ちを伝える。


 ついでに行動でも見せてやろうとして、私は彼の唇にキスをした。


「大好き」


「僕も……って、甘っ。なにこれ」


 すずくんが口の中でキャンディーを転がす。



 今日はホワイトデー。

 チョコレートに縛られていないからこそ困り。

 チョコレートに縛られていないからこそ何でもできる日。

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ホワイトデー・クライシス 姫路 りしゅう @uselesstimegs

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