第4話 第二の危機
「えっと、なになに?」
ワイヤートラップを抜けた先のパーティションに紙が貼ってある。
読むと。
『左の道はマシュマロ。真ん中の道はクッキー。右の道はキャンディー』
「……問題文!? 問題文にしては不親切過ぎない?」
私は驚きながら、もう一回文章を読んだ。
何かを見落としていないか注意深く読んだけど、不自然な改行やフォントもなく、本当にただそれだけの意味合いっぽい。
そもそも道ってなんだろう、と思いながら周りを見ると、私の目の前に立ちはだかっているパーティションに隙間が三か所空いていることに気が付いた。
数メートル左に一か所、すぐそこに一か所、数メートル右に一か所。
なるほど。
マシュマロを選ぶなら左、クッキーを選ぶなら真ん中、キャンディーを選ぶなら右から進んでくださいね、という意味らしい。
それはわかったけど、だから問題文は!?
なんだろう、上の文章は選択肢という感じはあれど、問題という感じはしない。
例えば『一番人気のバレンタインのお菓子はどれ』という問題に対して『左の道はマシュマロ。真ん中の道はクッキー。右の道はキャンディー』ならわかるんだけど。
それとも、これはシンプルに私が貰いたいものを選んでくださいねってことなのかな。
ううん。
……うん?
一番人気のバレンタインのお菓子。
私が貰いたいもの。
マシュマロ。
キャンディー。
「これって…………」
ふと、私の脳内の記憶を司る部分が激しく動き始めた。
いつだったか、バレンタインのお菓子を考えているときに、マシュマロという単語に出会っているはず。
あれは確か、そう。
ホワイトデーのお返しで絶対に選んではいけないリストだ。
贈るお菓子にも意味がある。
マシュマロは、『あなたのことが嫌いです』
そしてキャンディーは『あなたのことが好きです』
あと、マカロンも確か前向きな意味合いだった気がする。
それじゃあ、クッキーは?
クッキーは知らないけど、キャンディーより上なことはないでしょう。
私はゆっくりと息を吐いて、右の道を選んだ。
右の道を進むと机の上にキャンディーの箱が置いていて、その下にA4の紙が置いてあった。
キャンディーを口に放り込みながらそれを読む。
『ホワイトデーのお返しにキャンディーを贈る意味:あなたのことが好きです』
「あー、よかった」
何も考えずにマシュマロの道を選んでいたら、きっと机の上にはマシュマロの箱と嫌いですと言ったメッセージが置いてあったのだろう。
これは確かに、精神的な危機だ。
私は冷や汗を拭って、奥へと進んだ。
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