幸運の偽造
葎屋敷
アンラッキーセブン
世の中、運が悪いと称される出来事はいくらでもある。人身事故による交通機関の遅れに巻き込まれるだとか、天候が悪くて楽しみにしていた体育祭が中止になってしまうとか、せっかく遊びに行った遊園地で目的だったアトラクションがお休みだったりとか。
今俺の身に起きている出来事は、運の悪い、アンラッキーな出来事に違いない。あくまで、傍から見れば、であるが。
「……あ、陸川だ!」
俺は視線の先にいるそいつの名前を呼んだ。大声になってしまったのは、わざとである。俺の声に奴はすぐさま振り返り、そしてこちらを見た。
奴は高校時代の同級生、陸川だ。俺と同様地元から遠く離れ、都会の地で働いているらしい。奴が地元を出ていった時、有名企業に就職するらしいことは噂になっていたし、この辺りに住んでいることは知っていた。そのため、奴がここを通りかかることに俺が驚かないことはまったく不思議なことではない。
しかし、陸川にとっては違った。奴は俺が田舎から出て来たことなど知らなかった。この再会は衝撃的だったらしく、奴は鳩が豆鉄砲を食らったような顔でこちらを見ている。しかも、奴は俺が誰だかわかった上で、俺の現状を理解できないでいる。
奴のために俺の今の状況を簡潔に説明するとなると、俺はパチンコの理不尽を警察に訴えているところだという他ない。警察にこのパチンコ店で違法なギャンブルが行われていると通報、遠隔操作をしているはずだと店長を呼び出し、「はい、絶対やってます。この店やってます。遠隔やってます。認めてくださーい、罪を自白しろ! そうでなければ、朝あった三十Kがなくなるはずがないんだ、OK?」と二十五近くの大人とは思えないありったけの恥をさらしている自覚がありながら、なお金を取り返さんとする俺の姿がここにある。そして再度言うが、それをかつての同級生に目撃されている。
以上。
さて、ここで神様に質問だ。ここで打つべき次の一手とはなにか?
それは決まっている。俺は陸川と一緒にここから離脱することだ。
「えーと、警官さん、今日のところはもういいです」
「え。いや君さっきまで、人殺しだ、とまで言って――」
「あーあーあーあー! 聞こえないです、お疲れ様でしたー!」
俺は警官の言葉や突き刺さるパチンコ店員の視線をものともせず、現れた陸川の手首を強く、離さぬように掴んだ。
「俺、この後こいつと話があるんでぇ! それじゃあさよならー!」
「お、おい漆田!?」
陸川は抵抗を見せたが、俺は気にせず彼を引っ張ってその場を逃げた。現れた陸川は、俺にとって何よりも優先すべき存在であった。
*
俺は近場のファミレスへと陸川を引きずりこんだ。そして適当な席へ座ると、早速本題に入った。
「金を貸してください」
「……なぁ、漆田。俺ら、久しぶりに会ったと思うんだけど」
「そうだな! 今日は全然玉でねぇし運が悪いと思ってたけど、お前と会えたのはラッキーだった。金貸してくれ」
「正気か?」
陸川は俺を心底軽蔑した目で見ている。こんな反応、想定内だ。陸川はできる奴であると同時にプライドの高い奴で、俺を馬鹿にしていることなど今に始まったことではない。気にするようなことではないということだ。俺のやるべきことに、一切の曇りも与えまい。
俺は陸川の感情をできる限り揺さぶるべく、昔話を始めた。昔同じ野球部として汗水流したことを懐かしげに語り、同じ女を好きになって、二人してその恋が永遠に続かなかったことに苦しんだと悲しんで見せ、会わなくなってからの生活をつらつらと述べた。陸川も俺と過ごした日々に思うところがあるのは違いなく、俺の言葉ひとつひとつに耳を傾け、相槌をし、時々相貌を崩した。
そして、注文したハンバーグ定食を平らげた頃合で、俺たちの話は先程の問答へ帰った。
「陸川、親友の頼みだと思って聞いてくれよ。俺、今不安定な状態でさ。正社員っていう縛られた雇用形態にうんざりしてよ」
「フリーターなんだな?」
「金がなくてさ〜。大丈夫だ、陸川! 金はちゃんと返す。いつも運が悪い俺が、今日はお前と再会した。これは幸運の兆しなんだ、そうだろ?」
「お前が金を返すことと、お前のラッキーがどう関係すんだよ」
「そりゃ、お前から貰った軍資金で、これから一発当ててやんだよ」
「正気か?」
我ながら信用の置けない発言だ。
ここでもし、お天道様が俺の様を見ているのならば、俺を咎めていることだろう。しかし言い訳をしておきたい。決して俺も、こんなことをしたくてしているのではない。人間にはどうしようもない時や、これ以外道が見つからないって時があり、俺の場合、今がそうというだけだ。俺が久しぶりに会った昔の友人にお金をせびることもまた、仕方なくやっていることにすぎない。俺はクズではない。
「そうだ、お前もやってみろよパチンコ! 勝てばラッキーくらいのつもりで! やったことあるか、パチンコ?」
「まぁ、嗜む程度に……」
「そうか! ならこの後一緒にやろうぜ! 久しぶりにあったんだしさ、今日くらい付き合ってくれよ! な!?」
俺が両手を合わせて頼み込むと、陸川はしばし黙考し、結局は頷いた。なにかひらめいたといった風で、了承した時には俺と再会した時の戸惑いは奴の顔から失せていた。
「じゃあ、早速さっきの店に戻ろう」
「え。あの店に戻る気なのか? 正気か?」
「……確かに、あの店にはほとぼりが冷めるまで行きにくい。遠隔までしているし。となると、この近くにあまり玉が出ないと噂の店がある。そこに行くぞ」
「出ないとわかってて行こうとすんなよ」
俺は立ち上がり、先導切ってパチンコ店へ向かおうとしたところで、俺はあることに気が付いた。
「ごめん、陸川。後で倍にして返すから、ここ奢ってくれ。さもないと、俺はお前と共犯で無銭飲食をしたことにしてやる」
「ふざけんなよ、お前」
陸川は怒りを露わにしながらも、警察と積極的に関わり合いになりたくないと見えて、素直に俺の分の食事代を払っていた。奴は必要経費だとでも考えているのかもしれないが、俺はこの金を返す気は毛頭ない。
*
俺が陸川を連れて来たのは、駅の南口にある寂れた商店街の一角に存在するパチンコ店だ。名を、「ラッキーセブン」という。その名前からするに、人の幸せを願ってやまないと思われ、ここで打てば三十Kも三百Kになるに違いないと勘違いすることもやむを得ない。しかし、それは幻想だ。この店は多くの
なお、これはあくまで噂であり、俺は検証したことがないので真実はわからない。
「よし、勝つぞ、俺!」
「……あれ。お前パチ打つ金あんなら、さっき」
「気張ってこー」
俺は陸川が気づきを得たことを察し、奴の言葉を遮るようにして中に入っていった。
その後、俺はパチンコに愛されておらず、陸川はパチンコに愛されているということが俺たちの共通認識となった。陸川の席周りに玉が入った籠が増える度、運というものの偏りが見えたような気がしていた。
「陸川、お前、このラッキーセブンで運を使い果たすつもりか?」
「僻みはやめろよ。さっきの飯代ちゃらにしてやるからさ」
「おお。それじゃあ、ついでに金貸してくれ」
「ふざけんな」
奴の機嫌は玉の数に比例して上々となっていく。それでも金は貸そうとはしない。今後のことを踏まえ、踏み倒そうとしている俺の考えなどお見通しらしい。
ふーんだ、いいもんいいもん。俺は大局を見る男だ。こんなちまちまとした経費の回収が成功しなかったところで、気にしないさ。
「いいか、陸川。これからお前は人生で一番の後悔をすることになる」
「なんだよ。禍福は糾える縄の如しっていいたいのか? 馬鹿だな、漆田は。幸運ってのは世界の中で総量が決まってる。で、それは偏りを持って世界中の人間に配られる。生まれつき大当たりの奴と、そうじゃない奴がいる。それだけだ。俺は前者だった。実際、今俺の目の前にラッキーセブンは三つ並んでる」
陸川の言う通り、その眼前には忌々しい大当たりを示すラッキーセブンがあった。零れ落ちる球を見ながら、俺は陸川に問う。
「……それが、お前の人生観か?」
「さぁ? そんな立派なもんじゃないけど、そうだな……。これはラッキーセブン論だ。大当たりはめったに当たらないから大当たりなんだ。世の中には、大当たりっていいほど運がいい奴と、そうじゃない奴がいんだよ。実際、このラッキーセブンはお前のところには並ばない。だから、その一万円使うのやめた方がいいぞ」
奴はそう言って、俺が持っている諭吉を財布にしまうように指示する。俺が不満そうにしているのを愉快そうに笑って、
「悪いな。お前にとってはアンラッキーセブン論だったか」
と勝利を噛み締めていた。
*
さて、俺が三人の諭吉とさよならしたのに対して、陸川は四人の諭吉を新しく財布に迎え、さらには樋口一葉も侍らせていた。俺に勝ったこと、金が入ったことで気が大きくなっているからか、俺が飲みに誘えばこれをあっさりと承諾した。
居酒屋では俺が終始酒を煽り、奴はこれを嗜むだけだ。奴が身に着けているブランドもののスーツ、トレンチコート、高級腕時計、ビジネスバッグ。そのどれもが奴の余裕ある生活を物語っている。
一方、俺は上下安物のシャツとズボン、ラフさを突き詰めた格好である。両者の生活の差は語るに及ばない。
俺は腹が膨れない程度に肉を食らい、奴に近況を訊いた。奴はあまり多くを語りたがらなかったが、大手の営業マンをしており、婚約者もいて順風満帆だとか。一方、俺の人生もまた語るに及ばない。そんなの、高校時代から決まっていたことである。今の俺には金がない。それもまた、俺はあの時決めたことを、諦めきれずにいる結果だ。それがなんなのかと陸川はしつこく訊いてきたが、ついに俺は答えなかった。
店の会計を陸川に任せている間も、俺は奴の横で鼻歌を歌い、千鳥足で街道のモザイクタイルを踏んでみせた。それを奴はしっかり目撃していて、俺の様を笑っていた。すでに、奴に警戒心などなかった。
陸川は俺に肩を貸しながら、俺の家まで歩いていた。伝えた住所へと、俺が言ったとおりのルートを素直に歩く。すると途中、夜道に人気のない、薄暗く長いトンネルがあった。オレンジ色のライトが光っているものの、その不気味さは折り紙付きである。
俺はここに来るまでの間、ずっと喋っていた。俺が天蓋孤独であること、どうせ死んでも誰も気にしてくれないこと。いかに自分が独りであるかを刻々と語った。するとどうだろう。最初は神妙そうに聞いていた陸川は、徐に笑うようになった。いや、あれは嘲笑っていたといっていいだろう。俺の不幸に悦を感じていた。かつては真面目だった俺がギャンブルにはまり、生活も仕事もままならず、女の影もなく、ただひたすらに寂しいばかりである。そんな俺が滑稽で仕方ない。そう、その口元の歪みが語っていた。
トンネルの中央に差し掛かったところである。俺たちがトンネルの入り口からここに至るまで、車どころか人ひとりさえ通っていない。そんな閉鎖的空間でありながら、どこか広々さを感じるトンネルの中心で、陸川は足を止めた。俺もまた、動かないで奴の動向を待った。
「なぁ、漆田。恵美のこと覚えてるか?」
「もちろん。昼間も話しただろ。俺たちが二人して好きになったんだからさ」
恵美は、かつての俺たちの同級生であり、また、陸川の元カノでもあった。彼らの関係は一か月という決して長くはない期間で幕を閉じたわけだが、俺はどうしてそうなったかを良く知っている。
それは簡単な話。恵美が死んだからである。
「なぁ、漆田」
陸川がカバンに手をかける。それを見て俺は、ズボンのポケットに手を入れ、指先を動かした。
「――恵美の奴さ、お前が好きになっちまったって言ってたんだよ」
「冗談やめろよ。恵美はお前と付き合ってただろ」
「いや、違う。違う違う違う違う違う。そうだ、その通りだ。俺と付き合ってた。そうだった」
俺の否定を捻じ曲げるように、陸川もまた否定を繰り返す。酒に酔ったわけではないだろう。
奴はカバンからひとつ取り出す。それは刃がむき出しとなった、どこにでもある市販の包丁だった。キッチンで見ればただの調理道具だが、こと人気のない道において、その用途は限られる。
いち、誰かを脅す際の小道具。
に、誰かを傷つけるための武器。
さん、人を一方的に殺すための決定打。
「おまえがさあああ!」
「…………っ!」
激高した陸川は、俺にむかって包丁を突きだした。俺はこれを咄嗟に避ける。しかし、俺がうまく立ち回らないおかげで、陸川はあっさりと俺を壁際まで追い詰めた。
包丁の切先が、俺の眼球近くへと突き立てられる。これ以上、奴の攻撃を許すことはできないと判断し、俺は陸川の腕を懸命に抑えて、刃先が俺の眼窩へ侵入するのを防いだ。陸川は片足で俺の腹を蹴っていたが、両手から力を抜くことができない現状で、あまり力は入っていない。これでも俺は鍛えていて、これくらいの蹴りなら耐えることができた。
「お前が、恵美を殺したのか!」
恵美の死体は、学校の裏庭にあった。屋上から落ちたと思われ、自殺と断定されたのは十年近くの冬になる。
俺は彼女の死を悼んだ。そして、その死を訝しんだ。本当に、彼女は自殺したのかと。けれど答えが出ないまま歳を繰り返したのだ。
俺の叫びに、陸川は頬をあげ、大層嬉しそうに答えた。
「そうだよ! あの馬鹿女が俺じゃなくてお前のこと好きだなんて言うから――! いや、違う、認めない! お前が俺より優れていることなんて、なにひとつないんだからなぁ!」
包丁が少しずつ、少しずつ俺の顔へと近づく、せめて目は守ろうと顔を背ける。頬に痛みが走った。
潮時だ。俺は囁いた。
「ここで終わりだ、陸川」
先ほどから密かにかけている電話の先の人物に俺の声がなるべく聞こえないように、腕に力を籠め、微かに陸川を押し返し、その耳元まで自らの口を運んだ。そして、こう囁いたのだ。
「お前が人を殺したことも、俺を殺そうとしたことも、全部わかってたぞ、陸川」
瞬間、俺たちを白い光が包んだ。それは俺の通報によって駆け付けた警官が持っている、懐中電灯の光だった。
「お前! なにをしているんだ!」
陸川はその声に身体を跳ねさせた。俺の構っている余裕などなくなったと見え、包丁を持ったままその場から逃走を試みる。けれど、そんなこと許すわけがない。俺から目を離した奴の股間に、とびきりの蹴りをひとつお見舞いしてやった。
「ぐう、うもうぐううう」
苦悶の声をあげて、陸川は膝を折った。駆けつけた警官たちが陸川を取り囲み、ついには取り押さえられた。陸川は急所による痛みから徐々に立ち直り、警官の手から逃れようと暴れてみたり、泣き落としてみたり、誤解を主張したりと忙しい。俺は心配して肩を貸そうとする警官を手で制して、陸川に声をかけた。
「ラッキーセブンの由来、知ってるか陸川」
陸川の目がこちらを向く。その鬱々とした恨みがその瞳には宿っていた。
「野球の七回にさ、点が取りやすいことから来てんだってさ。相手が疲れて、点が取りやすいって。俺これ聞いたときにさ、悟ったんだよな。いくら七回に選手が疲れてようが、そこから点を取るのは素人にはほぼ無理だろ。それぞれが人生賭けて、自分の肉体も技術も磨き上げて、ようやく運がどうだって話になる。結果が得られる。要はさ、努力あって初めて運に縋る権利があるんだ、人間は」
俺はここ数か月のことを思い出す。この内心が、陸川に伝わることなどあるまい。伝える気もない。
――お前の彼女から、お前が人殺しかもしれないと聞いた時のことなど、お前には想像もつかないだろう。
*
彼女と出会ったのは、「アンラッキーセブン」という、名前からして客に玉を当てさせる気のないパチンコ店の前だった。
彼女は店の前で彼氏に金を巻き上げられていた。彼氏は彼女に唾を吐きかけるように怒鳴り、最後には店の中に入っていった。彼女は店の前で崩れ落ちて泣いていた。
誰もが見て見ぬふりをしたが、俺は彼女を放っておけなかった。彼女が心配だったのではない。彼女の彼氏、つまり男がかつての同級生、陸川だったことが理由だった。俺は、奴と接触する機会をずっと伺っていたのだ。
俺は彼女に優しく声をかけ、近くのバーに誘った。酒を入れさえ、陸川の情報をできる限り吐き出させた。そこで得た情報は以下のとおり。
一、 陸川は母親が死んだことにより、多額の保険金を受け取っている。
二、 陸川の母親は階段から落ちたことにより事故死だとされている。
三、 陸川は母が死んだことを悲しんだふりをしているが、彼女の前では大金が手に入った喜びを隠しきれていない。
四、 陸川は仕事がうまくいっている風だが、別に平均的で、彼が裕福に見えるのは偏に保険金のおかげである。
五、 陸川は酒を尋常じゃないほど飲んだ日があり、その日にうっかりと、彼女に自分が二人の女を殺していることを漏らした。そして、もし他言すれば、彼女もただでは済まさないと脅したらしい。なお、その時の記憶はさっぱりない。その日の日付を確認すると、恵美の命日であった。
六、 陸川は、昔自分の彼女の心を奪ったという同級生を嫌っている。なんなら殺したいと思っている。彼女を殺したこと、親を殺したこと、その二度がうまくいったのだし、自分はラッキーだから、次もきっとうまくいくはずだと思い込んでいる。
七、 陸川が嫉妬から殺したくてたまらないその同級生は、名を漆田という。
以上、酒の弱い陸川の彼女から吐かせた情報である。
それからの俺は早かった。もともと、奴のことは疑っていた。だからこそ、なけなしの金で奴の居所を調べ、その近場で働いていた。
俺は陸川の彼女が酒で潰れている間にロックを解除したスマホに、盗聴アプリを仕込んだ。決して、彼女に対して危害を加えたかったのではない。ただ、陸川に復讐できればなんでもよかった。
陸川は彼女と三日に一度は会い、自分の近況を喋る。その七割は見栄でできた偽りであり、陸川が自尊心によって迂闊になるということは、彼女との会話でよくわかった。彼女を見下せば見下すほど、陸川は酒気とともに口を滑らせた。
それでも俺は陸川の過去の罪を立証する自信がなかった。違法に得た録音しか、俺の手元にはなかったからだ。
そこでだ、奴の罪をもうひとつ作ることにした。俺を殺させようとすることで、奴を豚箱に送ってやると誓ったのだ。
陸川は俺と偶然再会したと思っていたが、それは違う。俺は、奴の前に計画的に現れたのだ。いかにも人生がうまく言っていないふりをしたり、反対に恵美のことを話題に出して奴の自尊心を上下に揺さぶった。
なにがラッキーセブン論だ。俺からすれば、現状は必然だ。
でも、それを教えてなんてやらない。
「お前と違って、俺は選ばれてなかろうが、大外れだろうが、できることをするんだ。そうしてたら、お前に運よく会えて、真相を知った。お前にとっては、アンラッキーだったな」
警官に案内され、俺はその場を後にする。陸川の咆哮はトンネル内で反響して、訊くに堪えない騒音となった。
幸運の偽造 葎屋敷 @Muguraya
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