七度目の正直
目々
六転び一撃
先輩が飲み代奢ってくれたんで特別に教えてあげるんですけど、俺就職してから親元離れて、でも一人暮らしって寂しいから最初の仕事首になってから八年くらい働いてなかった兄ちゃん実家から連れ出して家賃五万のボロアパートで同居してて、
その兄ちゃんこないだ死んだんですけど。
兄ちゃん死ぬまでに結構紆余曲折っていうか間が悪くて、トイレのドアで首括ろうとしたらロープ解けて失敗して手首切ろうとしたら用意してた包丁の柄が抜けてどうにもならなくって睡眠薬は普通にもどして駄目で洗剤混ぜようとしたら家にある分だと量足んなくて買い揃えようとしたら三回くらい買ってくる種類間違えて嫌んなって電車に飛び込もうとしたら最寄り駅の利用者が多過ぎて学生の群れに気圧されてホームまで辿り着けなくって真っ暗な顔して缶ジュース二人分買って帰ってきたし初心に返ってもう一度ドアノブで首吊ろうとしたら前回の負荷と
頭の鉢が割れちゃってて、アスファルトがびたびたになってて。
俺が今月分って渡した二万とスマホ持ってたから、多分俺が来る前に煙草買いに出たかなんかしたんですよ。そんでサンダルだったんで。夕方一瞬雨降ったんですよね。そんで。
俺思うんですけど、ずっと考えてんですけど。どっちなんですかね。
六回幸運が続いて死に損なったのか、六回不運が続いて生き続けたのか。
──七回目で死ねた、のが、幸運だったのか不運だったのか、兄ちゃんにとってそれがどっちなのか、分かんなくって。
そんなことも分かんないんですよ。弟なのに。
七度目の正直 目々 @meme2mason
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます