???

「チース! お疲れっす! あーやべ! 明日一日中寝てよーっと!」

「それよりさ、オサム。この後どっか行かねー? どーせ暇だろ?」

「えーシュウトくんは、これからファンのお姉さんの家に泊まるんでしょ? 良いなー」

「リク! 俺らは飲みに行かない? 警戒心ユルユルな子でも誘って」

「ソラ、俺も誘ってよ?」

「ユウマ、お前は駄目だろ? メンヘラな彼女がいるんだ、刺されるぜ? ソラ、俺を連れて行け」

「あははっ! リョウさんは駄目でしょ? 顔怖すぎっ! 僕は誰にも顔知られてないから、僕が行くよ」

「良いよなー、サクヤは。どーせなら俺ら全員VRアイドルにでもしてくれれば良かったのに。ねぇプロデューサー?」


 アンラッキーヘブンの面々がそれぞれ、好き放題な事を言う。

 しかし彼らは悪くない。私が設定した息苦しいキャラクターを守っているのだから。ストレスが溜まっているのだろう。

「ははは、あんまりハメ外し過ぎるなよ? お前らはアイドルなんだからな?」

「はーい」

 彼らは孤独だ。

 私がそうさせた。


 たとえばオサム。

 低賃金に不満を持つ労働者は多い。どれだけ働いても収入にが見えない人達もいる。そういう人達のニーズに応える為に、私が考えた。


 たとえばシュウト。

 彼も報われない労働者の為に作られた設定だ。実際に彼は住所不定で苦労をさせる事も多い。だから、少しばかりファンの子達とのも多めに見ている。


 リクとソラ。

 性的趣向、この言葉だけが一人歩きしているという現状があるが、たとえば、そう例えば、自慰行為を公で他人に見せると、どうなるだろうか。きっと多くの人々は軽蔑するはずだ。自分が何を好きで何に興奮し何に溺れるのか、それを他人に開示するのはとても恥ずかしい行為だ。しかし我々は既に、それを晒している。

 男は女が好きだし、女は男が好きだ。

 それは一々確認しなくても男女が顔を合わせれば暗黙の了解で分かり合える。

 だが、そうでない人は? 

 そういう彼ら彼女らは、先に述べた「恥ずかしい行為」をしなければ、自分を表現する事すら、ままならない。

 だからこそニーズがあると考えた。

 

 ユウマは好き放題したい人の為。

 リョウは見た目に恵まれなかった人の為。

 サクヤは孤独に堪えられない人の為。


 きっとこの事実を公開したならば、彼らは世間から攻撃されて、再起するのは不可能だろう。

 だから私は如何なるスキャンダルをも、揉み消す。


 大衆が彼らに、飽きるまで————。

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アンラッキー7。 Y.T @waitii

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