スジ肉

higansugimade

スジ肉

 関西の女性は明るいイメージで、ことに大阪ですな、関西弁は女性をパワフルに、時に「エゲツナイ」までの姿を生じさせます。次に出てくる女の子、いや、二十歳前後を女の子なんて表しますとしかられるかもしれません、彼女がツッコミ役をしていますので、そのようにイメージしていただきますようお願い申し上げます。たいへん、キュートです。もっとも、声音は私のガラガラ声なんで、皆様の、想像力が、大事なんでございますよ。

 ところは居酒屋大衆酒場、一対の男女がおるんでございます、隆々しい男と活発な女性がお酒を嗜んでおります。まあ、嗜むというのは上品過ぎる言葉でして、酒肴を喰らう、てな感じですな、笑わないとやっておられません。楽しくて楽しくてしかたないんでございますね。ほろ酔い気分で互いに調子良くボケツッコミかましてます。


 肉のスジは煮込んでも煮込んでも柔らかくはならなくて、良い具合の焦茶色、煮しめた大根といただきますれば。

「このスジ固いなあ。ガムやなあ。噛み切られへんわ」

「ごっくんしぃ、ごっくん」

「せやかて、大きいさかい、喉詰まらせる勢いやで。噛み続けるしかあらへん」

「背中叩いたるよってに」

「詰まらせる前提で言わんといてや」

 ぱしっ。

「いったぁ(くちゃくちゃ)、あほ、どたま叩くやつあるかい(くちゃくちゃ)、ほんまにもう」

「あはは、まちごうた」

「ようし(くちゃくちゃくちゃくちゃ)、こうなったらおれのアゴがくだけるか(くちゃくちゃくちゃくちゃ)、それとも」

「それとも?」

 くちゃくちゃくちゃくちゃ。

 くちゃくちゃくちゃくちゃ。

 くちゃくちゃくちゃくちゃ。

 くちゃくちゃくちゃくちゃ。

「ながとも?」

 くちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちくちくちくちちちちちちちちち……

「なんもないんかい!」

 ごっくん。

 ふう。

 あごの筋肉、めっちゃ痛い。


 そのあと、二人でくっちゃべったとさ。

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