第25話 菜と僕  完結

「ナダ、久しぶりだな。」あーあ、この感じ”菜”に間違えない。3年余り経つが忘れたこのとない、この感じ。「菜、会いたかったよ。」「えっ、気持ちが悪いな。正直すぎるぞ。」僕は菜の正面に立ち膝を少し折って菜の頭を大きな手で、なでた。「本当に会いたかった。」菜の頭の上にのせた手は菜の髪をぐしゃぐしゃにしながらなでた。「やめろ、ナダ、髪が、乱れるだろう。」「あー、ごめん、ごめん。つい、うれしくて、なでてしまったよ。」「ナダ、血が出ているぞ。私が治してやろう。」菜は手をかざし金色の光が僕の体中を包み込む。血は止まり、痛みも消えた。「ありがとう、菜。できれば、横でへこたれている僕の弟のカイも治してもらいたい。」菜は即答「いやだ。」「頼む。菜。」「いやだ。そいつは、私を殺そうとした。自分の私利私欲のために闇のマントの男も召喚して契約した。弱気者など助けるに足らない。この場でとどめを打ちたいくらいだ。」横のカイはおびえている。「菜、頼む。カイにも事情があったんだ。”妬み”という事情が。」菜が目をきつくして「はあ?妬みだとそれが理由になるのか?」僕は話を続けた。「そうだ。”妬み”事態は良くない。それは、妬む対象人物と自分を比べて自分が劣っているから、悔しいから、自分に自信がないから、ひがみ”妬み”が生まれる。その”妬み”のために対象人物に危害を起こす。それは、もちろんよくない。いけないことだ。弟カイは、僕に嫉妬を抱き、国王に認められたいがために闇のと契約をした。いけないことだ。ただ”そのこと”自体すべてを否定できない。カイの目の前に兄の僕がいたら変わっていたかもしれない。僕と前妃、僕の母を人間界に転生させたのは、父、国王だ。原因は、国王にもある。もちろん、”恨み”が募った”カイ自信が弱かった”からだともわかっている。カイそうだよな。」カイが黙ってうなずく。「だから頼む、菜。カイを助けてくれ。」菜は、あーあ、という目をして「しょうがないな。ナダ、またラーメン連れて行きなさいよ。」「もちろんだ。」「あとナダ、君の名前は、本当は”京”でしょう。”キョウ”と名乗りなさい。名前は大切だ。」「わかった菜。そうする。」菜は、へたり込んでいるカイの体に僕と同じく金色の光を放ち、治癒した。カイは「お兄さん、ありがとう。」カイの言葉に僕との距離が少し縮まった気がした。ただし、僕は冷静だった。「カイ、礼は菜に言ってくれ。菜の力で闇の力を消滅させ、死にかけのカイ、君を救ったのも僕じゃない”菜”だ。」カイが菜を見て「菜ありがとう。」少し照れた菜が「カイ、あなたもラーメンご馳走しなさいよ。」「ラーメン?」カイはラーメンを知らない。僕は「よし。このまま、ラーメン屋に行くぞ。2人とも、人間界に行くんだ。人間らしく振舞うんだぞ。」「はい、お兄さん。」「カイ、人間界ではキョウでいいよ。キョウと呼んでくれ。それに言葉はもっとラフでいいぞ。」「はい。」カイが改まった顔つきで「わかったキョウ。これでいいですか?」「いいぞ。それで。人間ぽい。」横で菜が笑ってる。「バカじゃないの、2人とも。変な感じ。」僕は「そういう菜こそ大丈夫なのか?記憶のない菜は、とても人間ぽくて良いお嬢様って感じだったぞ。今の菜にそれができるかな?」菜はぷーっと頬を膨らませて怒った。「ガラガラー。」ドアが開く。僕らは3人でラーメンをすすった。カイが「おいしい。こんなの“京”の世界にはありませんよ。」菜が少し偉そうに「そうだろう、そうだろう。“境界線”にもこんな、おいしいものは、ないぞ。」僕は横を向き「菜、僕とラーメンとどっちが好き。」菜は麺をたべながら視線はまっすぐに「キョウ、お前に決まっている。」

僕は、素直にうれしかった。

「菜、僕も菜が、大好きだ。」


3年前の春。桜咲く前夜、おぼろの夜。

僕は菜と出会った。曖昧な世界の住人。

京、境界線、人間界。曖昧な僕ら3人。

次はどの世界に転生しようか。


“黄色の春草野の匂う"

”菜”のいる世界なら僕は何処でも転生するよ。


きっと君も覚えていないだけで曖昧な世界から来た住人かもしれない。

曖昧な世界の住人はhappy endを好む。


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おぼろ月 続編 深夜の散歩で起きた出来事 京極 道真   @mmmmm11111

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