創作によって引き起こされる筋肉痛について

福岡辰弥

創作によって引き起こされる筋肉痛について

 創作をするのに何かを消費するとしたら、それは精神力だと思っていた。ゲームに出てくるMPみたいなもの。あるいは「やる気」みたいなもの。それを消費して、僕は創作をしているのだと思っていた。無限に湧き出る精神力の続くままに、寝る間も惜しんで、創作をしているのだと思っていた。

 けれど少しずつ、創作の時間は削られていった。大人になるにつれ、緩やかに、創作に対するモチベーションを持てなくなっていった。そりゃあ、創作だけをして生きていけるわけじゃないし。仕事も生活をしなきゃいけないし、毎日疲れているし。

 それでもたまの休みに、無理をして創作に向かう。

 たまに創作をすると、まるで筋肉痛みたいに、ひどい倦怠感がやってくる。精神にも筋肉痛ってあるんだろうか、とか考える。がつっと創作をした翌日は何もやる気になれなくて、ベッドの上でくだらない動画をスワイプすることしか出来ないでいた。

 もし創作にも筋肉痛があるのなら、体を休めるのも大切なことだよな、なんて自分に言い訳をして、無理してまで創作をしなくなった。仕事と生活に追われて、これ以上動けない。いつか万全な体調の日に始めよう、と、僕は精神力の回復を待った。創作に対するモチベーションが、休んでいればいつか回復するんじゃないかと思っていた。

 しかし考えてみれば、使わない筋肉が衰えるように、創作をせずに休み続けていれば、精神力は衰える。否、そもそも僕は休んでない。サボっていただけだということに、取り返しがつかなくなってから気付いた。

 目に見えないから気付かなかったけれど、僕の精神力はほとんど、骨と皮しか残っていない。あるいは、くだらない娯楽によって蓄えられた、贅肉まみれの醜い状態だった。

 もう、間に合わないのかもしれないけれど。

 それでも、もし間に合ったら嬉しいから、こんな懺悔を書くところから、もう一度始めてみようと思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

創作によって引き起こされる筋肉痛について 福岡辰弥 @oieueo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ