漁師さんのなみだ 💧

上月くるを

漁師さんのなみだ 💧





 朝、起き抜けの自分への叱咤激励に(笑)入浴や散歩、運転中、いつでもどこでも口ずさめる楽曲が十数曲、ヨウコさんの脳裡のレコード棚にスタンバイしています。


 口や頬、喉の筋トレも兼ね、なるべく大きな発声を心がけていますが、歌いながらどうしても泣いてしまう楽曲がふたつありまして……ひとつは唱歌『故郷』の三番。



 ――♪ 志を果たして いつの日にか帰らん……。



 これはきつい、いまだ志を果たせずに朽ちてゆく身には、相当にきつい歌詞です。

 イベントのあと全員で歌う機会がありますが、泣かずに歌えたことは一度もなく。




      🌠




 もうひとつは森山良子さんの『涙そうそう』 、NHKのど自慢に関連しています。

 東日本大震災からしばらく経ったとき、思い詰めた目の漁師さんが登場しました。


 若く無骨な彼が選んだのがこの曲で、人づきあいが上手でない自分を支えてくれたたったひとりの親友が津波に……大きな男がマイクを持ったまま号泣していました。


 以来、無口な漁師さんの悲しみが押し寄せて来てどうしても歌えなくなるのです。

 ことに一番星に祈る二番、空の親友さんに「どうか見守って」と頼みたくなって。




      🎸




 余談になりますが、事務所を閉じる日、退職して木工職人を修業中の元スタッフがサプライズで駆けつけて来て、ギターの弾き語りでミニライブを開いてくれました。

 

 朝礼時にみんなで斉唱していた歌が百曲ほどあり、そのなかから人気の曲を選んでくれたのですが、もちろん『故郷』『涙そうそう』も……全員💧💧💧💧でした。




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