21 マスタング
淀みの
我々は無言でカラオケボックスに入った。目的の部屋はすぐに見つかった。私は部屋のドアを開いた。
部屋の中では少年と少女が一人ずつ、くすんだビニール製の椅子に座り、携帯電話を操作していた。突然の我々の出現に二人は顔を引き
私は少年と肩を組んだ。少女も連れ、兄弟と一緒に事務所に移動した。ソファに座り、彼らと向き合った。私は少年を立ち上がらせ、顔面を殴打した。少年はローテーブルの角に頭を打ちつけて倒れた。割れた額から鮮血が流れ出し、溜まりが出来た。
少女は全身を硬く
あれはなかなかの儲け物だったと私は思う。起き抜けの脳を覚醒させるために、冷たい水をコップで二杯飲んだ。喉元を清涼が駆け抜けた。私は思う。あの少女を思い返すことは、もうないだろう。
そのとき、ベッドサイドテーブルに置いた携帯電話が鳴った。親からの電話だった。――親、私はあえて彼をそう呼ぶ。親からの電話は、いつ何時たりとも出なければならない。親はいくつかの実際的な質問をした。私はそれに答えた。
最後に親は、一人の男を消すよう私に命じた。その手筈になっている旨を伝え、電話を切った。言われるまでもない。
革靴を履くとき、乾いた濃い泥が付着していることに気がついた。私はその靴を履くことを諦め、リモワのジュラルミン製スーツケースを広げ、別の靴を取り出した。私は思った。あの少女に
カフェのテラス席には日が射している。歓談に興じる者、読書をする者、ラップトップを操作する者、人々は思い思いに過ごしている。
私はホットコーヒーが入った紙コップを手に取り、席を立ち上がった。通りを歩き、コインパーキングに入った。料金精算機で支払いを済ませると、フラップ板が下がる機械音が鳴った。
ポケットからリモコンキーを取り出し、フォード・マスタングの鍵を開け、運転席に乗り込んだ。エンジンを始動させるとカーシートを介し、屈強な鼓動が私の身体に伝播した。
フォード・マスタングは暴力的なエネルギーを内包し、粘り強く道路を駆けた。
私は
目的地であるカラオケボックスに私は向かった。カラオケボックスの入口に到着したとき、ちょうど兄弟がやって来た。歩いてくる兄弟を眺めた。兄弟が履いているバスケットシューズには、乾いた白い泥の跡が付着していた。
我々は目的の部屋のドアを開けた。中にはあの男――そう、彼がいた。そして見知らぬ少女が一人。美しい髪、白い肌、華奢な身体。覚えがある
「違うんですよ……」
男は立ち上がり、髪を振り乱しながら言った。その勢いでテーブルに置かれたアイスカフェオレのグラスが揺れた。生え際が黒くなった茶髪が、冷やかな蛍光灯に照らされ銅線のように光った。
私は言った。「やれやれ、まったく」
我々は四人で白昼の通りを歩いた。路上は夜の喧騒を引きずっており、
チュニジアの夜 ツル・ヒゲ雄 @pon_a_k_a_dm
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