全くの個人的な見方ですが、私は二十代前半までを主に美術、最終的にはデザインの道を歩み、その後は、農学、最終的には、遺伝子工学と植物病理学へと進みました。
本作では、大きな看板から、商品となる作物の値、そして、木工など、美術関連のこと、そして、現在進行形では、農業の世界が描かれております。
異色のコラボなどと世間では使われがちな組み合わせ、美術と農業がありました。
その他、土地の生活なども描かれております。
これは、嫁ぎ先の茸や山菜採りなどと似ていて、共感を覚えました。
私は残念なひとなんです。
テレビドラマを隣で見ている娘に、この人物は本当はこうした気持ちなんだけど切り出せないんだよとか、解説がつかないと分からないのです。
アニメーション番組では、夫に質問します。
ひとの心にあるひだを読み取る力がないのですね。
公的機関へ行って、裁判にあたり、何を言っているのか全く分からないと怒られました。
私としては誠意を持って述べていましたが。
様々なネット小説を拝読するにつけ、整理できないことは多々あります。
本作では、私にしては、内容を飲み込めやすいものでした。
ラストシーンまで走れなかったけれども、好感の持てる作品です。
空気の澄んだ綺麗な景色も浮かぶようです。
是非、お国言葉の情緒ある世界へ、お楽しみください。
生業という言葉がある。生きるための仕事を表す語です。
どうやって身を立てるのか、生業は人それぞれです。天職が見つかる人もいる。家庭の事情などから予め決まった仕事をする人もいる。
そして本作の主人公・譲さんのように、自分の居場所やスタンスを見失い、進むべき道も分からずに迷ってしまう人もいます。
譲さんの前職に絡めた『看板』という概念が、本作のテーマの根幹をついています。
自分という人間を他者に知らせるためのもの。当然、自分が自身のことをしっかり把握していなければなりません。
譲さんに加え、このみちゃん、海太くんというメインの三者が三様に、悩みながら己の道を見出していきます。
まさにど真ん中のヒューマンドラマ。
きっと多くの人が一度は感じたことのある迷いや悩みが非常に丁寧に綴られており、事あるごとに深い共感を覚えました。
そしてタグにもある『グッドエンド』の文字に、読了後すごく納得しました。
譲さんにとってベストではないかもしれない。手放しでハッピーとも言い切れない。
だけど紛れもなく『グッド』。彼が見つけた人生の落としどころに、とてもリアリティがありました。
ちゃんと前を向きたくなる、清々しい読後感の物語でした!