バレリーナは筋肉で語るのだ。
山岡咲美
バレリーナは筋肉で語るのだ。
『動け私、動け私の筋肉、骨を引っ張り、体を操れ!!』
その日も私は舞台にいた。
私の体は躍動し、人々の目を釘付けにした。
『引っ張れ、
『あばらの下、二つの
筋肉は骨を引く時に一番に力を発する、ただ、ただ何かを引っ張る為のタンパク質の塊。
だか私にはそれしかない、その力で体を操り、ただの体を、美術品より美しい存在へと変える。
『手の平を開き指を伸ばせ、何かを求めるように、一ミリでも先に、一ミリでも遠くへ、腕だけで演技するな』
『
『意識を集中させろ私、横着するな、指は語る!』
『
『もっと遠くへ、もっと求めるように……』
そして失った悲しみを観客に伝えるような演技……。
『完全にコントロールされたスピードで腕を下ろせ……、腕と視線で表現しろ、筋肉よ動け、内側の筋肉達いう事をきけ、私のいうがままに完璧に、完全に、一ミリの十分の一の精度を示して動き続けろ、連動させろ』
『私の意のままに、骨を使い演技をコントロールしろ!!』
『ヒロインの想いを観客に伝えるんだ!!』
今舞台のスポットライトは私だけのもの、私の
『演技しろ、演技しろ、演技しろ!!』
その一心で私は息苦しさも、酸欠で飛びそうになる意識も
私の息が乱れる事など許されない!!
私はバレリーナ、この体一つで観客達を舞台に引き付けるヒロイン。
***
その日も私は舞台にいた。
鳴りやまない歓声が、私に生きる希望を与えてくれる、それだけが私の存在意義、それだけが私に一分の隙もない日常をおくらせてくれる。
選択を許されない食事も、
休みを許されないレッスンも、
全てはバレエの為に、
全ては観客の為に、
全ては私の為に、
私は今日も筋肉を操り骨を動かす。
バレリーナは筋肉で語るのだ。
バレリーナは筋肉で語るのだ。 山岡咲美 @sakumi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます