バレリーナといえば、優雅、しなやか、滑らかさ、立ち姿の美しさ、躍動感——そんなイメージが思い起こされる。
それはしかし、観ている側のイメージだ。
その裏にはひたすらの訓練とイメージを現実に変えるための技術、さらにはその先を目指す内なるパワーがもたらす何かがある。
小説も同じだ、と思った。
ひたすらな情熱をカンバスにぶちまけたような芸術もあれば、技術と抑制によって細部を組み上げていき、総体として感動を呼び起こす芸術もある。
後者が芸術になるには、この作品の主人公のようなストイックさとクレバーさが必要なんだ、と思う。