筋肉

Y.T

 ハンバーガーばっかり食ってると、太るぜ?

「くらえ! アックスボンバーッッ!!」


 大男のまるで太ももの様な腕が、木こりが斧を振るう様に、真横に薙がれる。

 そして、爆発した。

 それを食らった、小さくも屈強な体つきをした男が、消滅する。


「ぐああっ!」

「よっしゃ!【微マッチョソルジャー】! 撃破!」


 苦悶の表情を浮かべるに対し、かつは勝ち誇った顔をしていた。

 彼らは【決闘者デュエリスト】、である。

 彼らがプレイしているのは、一時期空前のブームを巻き起こしたトレーディングカードゲーム【むせるマッスラー】だ。

 彼らは子供時代から続くその情熱を、今も絶やさないでいた。しかし彼らの体つきは筋肉よりも贅肉が抱負で、カードに描かれたマッスラーとは似ても似つかない。

 そしてここは、とあるハンバーガーショップである。


「俺のバトルフェイズはまだ終了してないぜ!」

「くっ……!?」


 彼らのカードに込められた魂は場に、具現化されていた。

 ちなみに、このカードゲームと同時期に発売された類似品をプレイする者は皆「決闘者デュエリスト」の称号を得る事ができる為、この物語は何かの二次創作、というわけではない。

 ただの魂のこもった熱いバトルである。

 

「行け!【筋肉質な運転手トラックレスラー】! プレイヤーにダイレクトアタック! アックスボンバーッッ!!」

「うわぁああああああ!!」

 

筋肉質な運転手トラックレスラー】の筋肉が爆ぜた——。


「アックスボンバー! アックスボンバー! アックスボンバー! アックス——」

「ぐぅわぁああああああああああ!」

 

「やめて克樹! もう佐我のライフポイントはゼロよ!?」

 韓国メイクの美少女、はんが克樹を止めようとする。


「うるさい! 離せ! 離せぇッッ!!」

「やめて克樹!」

「ああああああああああああああッッ!!」


 それを冷ややかな目で見つめる女子が一人——このハンバーガーショップに勤める若き店員だ。

 彼女は毎度毎度この店で大騒ぎをする克樹達を疎ましく思っている。


(誰も私を、助けてくれない)


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 筋肉 Y.T @waitii

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