猫様の秘密

猫兎彩愛

満月の夜に……

 ご主人様が深い眠りについた満月の深夜、僕は土産を咥えて、物音を立てないように家の外に出る。暫く走ると人影が見えてきた。執事のロイだ。


「王子、お迎えに上がりました」


 僕はヒト型になるため、ロイから腕輪を受け取り、手に嵌める。すると、猫耳はそのままで人の姿になった。


「この姿も、1ヶ月振りだな」


 僕達ネコ属は、自分達の国ではこの姿で過ごしている。他の飼い猫や、野良猫といわれている仲間もそう。自分達の国もあるのだが、人間界の暮らしは住みやすく、とても良いので、皆、人間達と一緒に暮らしている。1ヶ月に一度、満月の夜に僕達の国へのゲートが開くので、そこで国へ帰る。


 ロイと一緒に静かな深夜の住宅街を歩いていく。僕は空を見上げる。満月がとても綺麗だ。暫く歩き、近くの森まで行く。


「リチャード王子、到着致しました。王女様は先に行かれている様ですよ」


 と、ロイが軽く頭を下げ、後ろに下がる。僕は腕輪を満月に翳した。すると、満月の光に照らされて扉が現れる。


 そう、僕たちの国へ続くゲートは、満月の夜にしか開かない。森の奥深くに現れる扉、人間達は知らない。否、知られてはならない。知られてしまうと、きっと騒ぎになるだろう。僕は王子として、ネコ属を守る義務がある。


 扉に入り、ネコの国に到着した。僕は土産のお気に入りの猫缶を皆に渡した。人間界に行かなくなった猫もおり、かなり喜んでいくれた。それに1ヶ月振りということもあり、話が弾んだ。それから更に朗報が。


 王女が妊娠したらしい。これにより、僕は……僕と王女は王座を引き継ぎ王になる。国はお祝いとお祭りでかなり賑わった。時間を忘れる程に……


 気付いた時には遅かった。もう、1ヶ月は人間界に戻れない。飼い主(主人)もかなり心配することだろう……でも、これはどうしようもない。


 1ヶ月後、恐る恐る人間界の家に帰ると、家の前に張り紙が。どうやら、僕をずっと探してくれていたらしい。僕は嬉しくなり、家へ飛び込んだ。


 すると……主人は驚きながらも、僕を優しく抱き締めてくれた。良く見ると目に涙が溜まっている。


 (あったかい……)


 僕は主人に愛されている事を実感していた。でも、これからは国のため、子供の為になかなか来れなくなる。僕は寂しくて仕方がなかった。


 限られた主人との時間を大切にしよう……


 僕が居なくなっても、いつまでも元気で居てね、別れた後もこっそり会いに行くよ。満月の深夜、その扉を開いて……





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