私は深夜に散歩に行かない
九十九 千尋
そして私はティッシュが手放せなくなったのだ
「深夜の散歩で起きた出来事……??」
小説投稿サイト、カクヨム。その7周年記念イベントの「カクヨムコン」という公式企画にて皆勤賞を狙う私は頭を捻った。
「創作は自由であるべきだ」という方便を盾に、毎回色々悪ふざけが過ぎる作品を書いている私だが、そもそも話が浮かばないことは多い。どうしたものかと灰色の頭を捻る三月である。
さて、今回のカクヨムコンのお題は「深夜の散歩で起きた出来事」だそうだ。
まるでネタが浮かばない。こういう時は実際に実践してみるに限る。
というわけでインドア派で病弱な私が深夜に散歩に……出られなかった。
実家暮らしの私だが、そもそも両親が高齢になってから生まれた来歴故か、虚弱体質であるが故か、深夜に出かけることはご法度の家である。
だから深夜に散歩には……
知るかぁあ!! ネタを寄こせぇ!!
私は施錠を破り、深夜の外出へと乗り出……せなかった。
うちには認知症を患った老人がおり、時々深夜に勝手口から誰かを迎えに行くのだと出て行こうとすることがある。それ故に施錠が多い。なんだったら、そういう深夜徘徊を防ぐためのしっかりした南京錠が付いている。
だが私はあきらめない!!
私は窓から乗り出し、深夜の散歩で起きた出来事を探しに……いけなかった。
実はうちの家がある場所は、我が家族が越して来る前は幽霊屋敷として有名であり、近所のちびっ子たちの肝試しスポットになっていた。当然、当時の住人も夜が活動時間である。
コート姿の男と目が遭った。男は我が家の敷地内に居て、私に頬を釣り上げながら微笑んだ。
そして、コートの下の裸体をこちらに向けてきた。オバケじゃねぇ、これ生ものだ!
「あ、もしもし? 警察ですか? うちの敷地内で露出狂が出ました」
奇しくも、警察に現場の状況を聞かれながら外(庭)に出た私は空を見上げた。
そしてあるミスに気付いた。
あ、今日、花粉症の薬飲んでない。
私は深夜に散歩に行かない 九十九 千尋 @tsukuhi
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