行方不明になった本屋の店員

マチュピチュ 剣之助

消えた本屋の宮田さん

「ねえ太郎、宮田さんが急にいなくなったらしいよ」

 電話の向こうで聞こえる美穂の声は、少し慌てているのが、太郎にもわかった。

「え、宮田さんが?どうして?」

 太郎は驚いて、詳細を確かめた。どうやら、本屋の『尾張国屋』が朝になっても閉まったままなのを不信に思った人たちが、宮田が失踪しっそうしたことに気づいたようだ。


「宮田さんがどこにいるかって何か手がかりあるのかな・・・」

 太郎がそう言うと、美穂が答えた。

「どうやら、宮田さんは深夜に散歩する習慣があったみたいよ。おそらく、昨晩散歩してから家に戻ってきていないのではないかしら」

 そういえば、本屋で宮田本人から深夜によく散歩するということを聞かされていたことに太郎は気が付いた。

「わかった。今から宮田さんを探しに出かける!」

 太郎はそう威勢よく言うと、電話を切った。

「あ、たろ・・・」

 切る直前に美穂の声が少しだけ聞こえた。


 宮田が深夜に散歩するコースを、何となく太郎は知っていた。駅から『尾張国屋』を経由して、大きな公園に向かうのであった。

「あれ・・・」

 本屋の前についた太郎は、本屋のシャッターにいつもなかった落書きがあるのに気が付いた。


 505


「この数字は何の意味があるのだろうか・・・」

 太郎は立ち止まって考えた。もしかしたら宮田が残したものなのかもしれない。さらに歩いていると、パンダのぬいぐるみが落ちていた。

「これは・・・」

 太郎が小さい頃に大切にしていたぬいぐるみとそっくりなものであった。そういえば、太郎はぬいぐるみの話を宮田にしたことも思い出した。


 公園の中を歩いていると、先ほどみたパンダのぬいぐるみが再び落ちていた。さらに、そのぬいぐるみには血のようなものがついていた。

「すみません」

 公園の近くに住んでいる女性がいたので、太郎は声をかけた。

「昨晩の夜中に、公園で何か変わったことは起きませんでしたか」

 すると、女性は驚いた顔をして言った。

「あら、どうして知っているの。実は、夜中に公園で女性の叫び声が聞こえたから、慌てて私も公園の方に向かったの。そしたら、屈強な男性が走って逃げていくのが見えたの。叫び声をあげた女性には会えなかったけど、心配になって少し見に来たところなのよ」

 太郎は、心臓の鼓動が速くなるのを感じた。


 一体、深夜の散歩に何が起きたのであろうか。そして、宮田は今無事なのであろうか。

 わからないことが、太郎にはたくさんあった。

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行方不明になった本屋の店員 マチュピチュ 剣之助 @kiio_askym

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