第7話 ニコニコする慶。

 金曜日、太一は咲良の部屋に来ていた。

「ただいまー、って、あれ?」

 遅れて咲良も帰宅した。

「お帰り、俺の方が早く仕事終わったからさ、メシ作ってたんだけど、余計、だった?」

 太一が恐る恐る訊く。

「全然! ありがとう!」

「なら良かった」

「でも、なんで?」

「いやー、俺ってなんか、頼りないよなぁ、なんて思っちゃって」

「うん。それはそう」

「おい!」

「今に始まったコトでもないでしょ? それがギモン」

「……慶が待ってるから、早く入れよ」

 咲良の部屋は玄関と居間に仕切りなどはなく、入れば直ぐに全体が見渡せる。「入れ」とは、靴を脱いで慶と話せ、という意味だ。

「慶が? うん」

 咲良はスリッパに履き替え、ニコニコする慶に近づく。

「慶? どうしたの?」

 慶が後ろ手に隠し持っていた、それを取り出した。

「じゃーん! お母さん見て見て! 今日学校で描いたの!」

「——!」

「そういう事。なんか責任、っていうかさ。そういうのを感じた」

 慶が持っていたのは一枚の紙。それに描かれた水彩画だ。なんの変哲もない、一枚の絵。

 そこには男性と女性と、その間で手を繋ぐ、男の子が描かれていた。太一と咲良と慶、である。


 その絵はとても下手くそで、、だった。



 終わり。

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 ぐちゃぐちゃ Y.T @waitii

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