第6話 オチはない。
「————って、事があったんだよねー」
咲良は友人宅に来ていた。広々としたその新築一戸建ては、友人とその夫の信頼関係を表しているように感じる。
「良いじゃん良いじゃん、協力してくれようとするだけ、まだマシ。あたし専業でしょ? だからそれがあたしの仕事だ、ってウチの旦那、何にもしてくれないんだから!」
「えー? 自分のやり方と違うことされると、イラッとしない?」
咲良がケーキを頬張りながら言った。ここに来る前に咲良が購入したものだ。甘さが少し控えめで、紅茶と良く合う。
「するする! でも何もない方がイラッとするよ。せめて感謝ぐらいしろっつーの!」
「美波はすごいよね? こんな広い家なのにいつも綺麗にしてて」
「そうなのよ! マジで大変! ウチの人、帰って来たら靴下とかポイポイその辺に放るんだから! ガキかっつーの!」
「あはは」
咲良は慶の靴下を思い出した。子供の靴下は、中々臭い。
玄関マットに散らばる靴下を見るたび咲良は慶を叱るのだが、たまに変な所から靴下が出て来る事もある。裸足の方が過ごしやすいのはわかるが、せめて仕舞う所へ仕舞う習慣は身につけて欲しいものだ。
そういえば太一が家に来る時、そんな事はしていない。ムードが崩れるからと止めたあの時ですらも、キチンと下着は纏められていた。
それを思い出して思わず笑う。
「——この家、旦那さんが買おうって言ってくれたんでしょ? 頑張ってるなー」
「そうそう! ローン払い終わった頃にはウチらはどっちも、もれなくジジババ!」
「あはは」
咲良は思い出す。
そういえば自分は片付けがとても下手だった。まだ元夫と別れる前、その生活空間は荒れていた。共働きだった為、家の事までする余裕がない。そんな事を考えていたものだ。太一の部屋の方が大分マシ、ぐちゃぐちゃだった。
別れた途端に色々な事に目が向いたのは、何なのだろう?
「ウチの子もさぁ、ウチの人に似て、遊んだ後片付けないのよねー? 女の子なのに」
「それは美波に似たんじゃない?」
「えー?」
「なんかだらしない人と一緒だと、コッチがしっかりしなきゃってなるよねー?」
「うんうん、あ、慶くんもそんな感じ?」
「ああ慶はその辺、しっかりやるから。しっかり躾けてますので」
「咲良はすごい! 独りなのに!」
「一人じゃないって、太一がいるから」
「あらあら? 結局、惚気話?」
「そんなんじゃねーし」
咲良と美波のオチのない話は続く。
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