ぐちゃぐちゃのルーズリーフ

これは、一体何?

咲茉えまは、ある日、下駄箱の異変に気が付いた。

ぐちゃぐちゃに丸められたルーズリーフが、下駄箱の中に乱雑に置かれていた…。

これは…一体?困惑する咲茉。


(もしかして…)


咲茉の脳裏に、ある三文字が浮かぶ。


い・じ・め


だ。


(そんな…)


下駄箱の前で、しばらく放心状態の咲茉。その咲茉に、話しかけてきたのは、同じクラスの、あさひだった。


「?なんか入ってんの?」


「え!?」


頭から血の気が引いていた咲茉は、その声に、大袈裟に驚いた。まずい。いじめられてるなんて言ったら、旭にも嫌われるかもしれない。…そう、咲茉は、旭がすきだった。


「ないない!何でもない!!」


慌ててぐちゃぐちゃのルーズリーフをしまい込むと、さっさと玄関から出て行った。


「どうしよう…どうしよう…」


明日と言う日が、一気に怖くなる。家に帰ると、咲茉は、すぐに紙屑を捨てた。


次の日の朝、咲茉が恐る恐る下駄箱を開けた。すると…また入っているではないか。もう、これは完全にいじめの始まりだ。それでも、解せなかった。友人は、下駄箱で紙屑を鞄に急いでしまう、咲茉に「おはよう」だの「今日、体育めんどいね」

だの、いつもと変わらない態度だ。少なくとも、クラスの中にこの「いじめ犯人」はいないと思われる。


じゃあ…誰が…。


それから、学校生活は一向に変わらないのに、ぐちゃぐちゃのルーズリーフは溜まる一方だった。そう、何だか最初の方こそ気持ち悪くて、捨てていたが、ここまでしつこいと、逆に、変に気になる。


ある日、とうとう、卒業式を迎えた。


あの謎は解けぬままだ。気になって、仕方ない。これは、いじめではなかったら、一体何だったのか…。もう、気になって…。


卒業式が終わり、ワイワイしていた教室にも静寂が戻った。下駄箱には、やっぱりルーズリーフ。ふと、後ろから旭の声がした。


「それ、最後の一枚なんだけど」


開いてみると、「好きだ」と書いてあった。

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