不幸な七福神

篤永ぎゃ丸

福よ、来い。


 7名の新人の神は『七福神』に配属された。恵比寿は日本から雇用し、他の6枠は外国から派遣すると様々な背景を考慮して能力を活かせる役割を与えた。労働先は米俵と金銀を乗せた豪華な宝船。縁起の良い『福徳』を宣伝文句に掲げる神様達に顧客は七回、注文を依頼する。


 福をくれ。


 福を持って来い。


 福が欲しい。 


 福を呼べ。


 福を招け。


 福をもたらせ。


 福を恵んで。


 強い『福』の需要に神様達は御利益を生産しようと行動した。だが、七福神は機能しなかった。それどころか、組織は崩壊の一途を辿る。


 恵比寿えびすは過労死した。大魚守護の神様で、有名な商売繁盛の象徴なのに。結局、働き続けなければ何も得られない。期待には、応えなければならない。


 大黒天だいこくてんは解雇された。出世開運、商売繁盛の守り神なのに。恵比寿と役割が駄々被りで職域が狭く、これでは組織に貢献出来ない。


 福禄寿ふくろくじゅは人徳を失った。招徳人望、財運招福、延命長寿。得を寄せ集めた神様なのに。欲張り過ぎは破滅を呼ぶ。


 毘沙門天びしゃもんてんは愛されなかった。知恵と勇気を兼ね備えた夫婦和合の神様なのに。好戦的で威厳があっては、暴力に頼ってしまう。


 布袋尊ほていそんは存在感がなかった。商売繁盛、家庭円満、不老長寿の神様なのに。全てを楽観視して、真似事しか出来なければ労働適正は無いに等しい。


 寿老人じゅろうじんは淘汰された。長寿を全うする、福徳智慧の神様であったのに。健康的に歳を重ねても、時代に置いていかれては何の役にも立てないのだ。


 弁財天べんざいてんは差別された。福徳施与の神様で紅一点だったのに。全てにおいて見返りを求め、不平等を過剰なまでに嫌った結果、反感を買う事になる。


 七福神。それは日本で親しまれている福をもたらす七柱の神の事で、正月には7人の神々を巡拝して福運を祈るという。


 そして、また新しい福の神が採用される。それを顧客は誰も知らない。今日もまた、軽々しく注文を口遊む。


 福よ、来い!!!!!!!

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不幸な七福神 篤永ぎゃ丸 @TKNG_GMR

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