第37話  ほんとの『好き』(最終話)


「大好き! 想太」

 その言葉を聞いて、はじけるように明るく笑った彼は、

「ありがとう! やったぁ~!」

 そう言って、めちゃくちゃ嬉しそうに、帰って行った。

 私の心にも、想太の『大好きやで。めっちゃ』の声が宿る。

 ほわっと優しい温もりのこもった、声。関西弁のひびきが、気持ちいい。

 今、私は、この世のあらゆる単語の中で、『好き』が一番好きだ。


 家に戻ってしばらくすると、想太から、メッセージが届いた。

『また 星見に行こな』

 小さなパンダが星を指さしているスタンプと一緒に。

『うん。行こうね』

 小さなパンダがお茶を飲みながら星空を見上げているスタンプを送る。


 ベッドに寝転がって目を閉じると、今日2人で見た星空が目の前に広がる。

 星空の下、私は、ほんとの『好き』について考える。


 『ほんとに好きだったら、理由なんかない』という言葉。


 一緒にいると、笑顔でいられる。

 それって、まちがいなく、『好き』、だよね?

 ただ、その『好き』は、人間だけに限らなくて、何か、モノや動物にでも、感じるときもある。

 でも、私の想太への気持ちは、それとは、全然ちがう。


 私が、想太を好きな理由。

 それはもう、山ほどある。毎日毎日、その数は更新されている、といってもいい。


 カッコよくて可愛くて、彼が笑いかけたら、どんなしかめっ面の人でも笑顔になってしまう、『想太マジック』の使い手で、いつだって一生懸命で、真っ直ぐで、やさしくて、あったかくて、時々、ちょっとうっかりさんなところも可愛くて、人の話を聞くのが好きで、歌うのが好きでピアノやダンスが上手で、お芝居までこなして、サッカーが好きで、誰かにイジワルしたりしなくて、頼りがいもあって、そして周りの人のことよく見ていて、誰かがつらそうなら、そっと声をかけて寄り添う子。がんばりやさんで、責任感が強くて、誰からも愛される子。長いまつ毛も、薄茶の大きな瞳も、キリッとしたきれいな眉も、整った横顔も、すべすべの頬も全部全部、全部、好きだと思う。まだまだもっともっとある。これまで積み重なってきた理由がまだまだある。


 そう思ってから気がついた。

 山ほどある『好き』の理由は、毎日更新されて毎日積み重なって、気がつくと『好き』の中に溶けこんでいく。そして、その理由同士もつながり合って、さらに一緒に溶け合っていく。


 私は、ちょっと発見したような気持ちになる。

『ほんとに好きだったら、理由なんかない』のじゃない。


 山ほどいっぱいある理由が、全部溶けてっちゃうんだ、きっと。

『好き』っていう大きな気持ちの中に。

 だから理由がどんなにたくさんあったって、溶けて一つになるから、ほんとの『好き』に理由がない、ように思えるんだ。たぶん。きっと。そう思う。

 

 私は、目を開けた。1人でなんだか大発見したような気持ちになる。


 きっと、明日からも、私が想太を好きな理由は、どんどん増え続けると思う。

 でもね。

 どんなに増えたって大丈夫。全部、私のこの想いの中に溶けていくから。

 

 どんとこい! 想太、もっともっとステキになったって大丈夫だからね。

 私だって、負けてられない。


 ね、想太。大好きだよ!

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ほんとの『好き』を教えて? 原田楓香 @harada_f

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