猫乃わん太の事件簿 しろくま君失踪事件

水城みつは

しろくま君失踪事件

 ここのところボクの周りで不可解な事件が繰り返されている。

始まりは背の高い彼(仮に「きりりん」としておこう)が階段下に倒れていた事件だった。

何者かに突き落とされたと思われるが、きりりんは犯人について何も語らなかった。


最も不可解な事件は「しろくま君(仮名)」の失踪事件だ。

小柄な彼は割と普段からふらふらしているが、夜中に出歩くことはなかった。

それが毎晩のようにいなくなっており、しかも、なかなか帰って来ず、誰かにつれられてやっと帰ってくる有りさまだ。

こころなしやつれたようであり、傷ついているようにも見える。

どこに行っていたかを尋ねたものの、ボクには答えてくれない。


 頻発する事件の共通点は多い、おそらく同一犯だろう。

これは、ボク、猫乃わん太がVTuber探偵としてデビューするにふさわしい事件かもしれない。


調査の結果、「うさぴょんさん(仮名)」も同様に失踪していた(誘拐されていた?)ことがわかった。

彼女もしろくま君と同じく、割と小柄である。

大柄な「くま吉(仮名)」さんは突き飛ばされて転倒していた。

小柄で軽く、さらいやすそうな彼女らを狙ったとしても犯人はそれなりに大柄であろう。


引き続き聞き込み調査をするが、誰一人として犯人の情報を答えてはくれない。

犯人に脅されているのか、それとも、犯人をかばっているのか。

これは、張り込んで直接現場を押さえるしかあるまい。


電気が消え、付近が薄暗くなった。

ボクは視界の端にしろくま君の姿を捉えている。

彼を張っていれば犯人が現れるに違いない。


いつしか、付近の雑音も消え、遠くの電気も消えた時、遂に犯人の姿を捉えた。


「にゃぁ~~ぉ」

猫パンチを食らったしろくま君が廊下を疾走していく。


ボクは非力だ。

犯人を目の前にして何もできない。

犯人に見つからないように息を殺して隠れるしかない。

ボクはぬいぐるみ系VTuber、ネコは天敵である。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

猫乃わん太の事件簿 しろくま君失踪事件 水城みつは @mituha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ