KAC20231 本屋

橋元 宏平

本屋は異世界

 私は、本屋を異世界だと思っている。

 本屋に入った瞬間、雰囲気が変わる。

 新しい紙とインクの匂い。

 目の前に広がる、読み切れない本の数々。

 街の雑踏は遠くなり、静かな空間が広がる。

 本好きな大人がゆっくりとした足取りで本を選び、ページをめくる音が聞こえる。

 たまに、幼い子供を連れた親御さんが来て、楽しげに本を選んでいるのも、それはそれで悪くない。

 本屋に訪れる人間は、本当に本が欲しい人だけ。

 近年、電子書籍や無料ダウンロードで、本が手軽に読めるようになったけれど。

 私は断然、本屋で買う派。

 本屋なら、何時間でもいられる。

 目立つ場所に設置された「新書・話題の本コーナー」で、平積みされた流行りの本を探すも良し。

 好きなジャンルの本棚へ行って、好きなシリーズの新刊を見つけるも良し。

 子供の頃に読んだ絵本の美しい表紙を眺めて、童心に返ってみるも良し。

 普段は読まないジャンルの本棚へ行って、目を引くタイトルを探してみるも良し。

 小説も漫画も絵本も、どれも心惹かれる。

 本の厚さで、物語の長さがひと目で分かるのも良い。

 気に入った本を手に取り、日に焼けていない真新しい紙の美しさに見惚れる。

 表紙ひとつとっても、紙の材質が異なるのも面白い。

 古い小説の表紙が一新されて、人気絵師のイラストに変わっているのも興味深い。

 ゆっくりと店内を歩き回って、読みたい本を探す。

 私は、ジャンル問わず、興味が引かれればなんでも読む雑食派。


 本は私を、気軽に異世界へ連れて行ってくれる。

 ファンタジー世界を楽しく冒険してみたいし、ミステリーやホラーの世界だって、恐る恐る覗いてみたい。

 ページをめくる度に、次はどんな展開が待っているのか、ときめきが止まらない。

 そして、本を閉じるだけで、すぐに現実世界へ戻って来れる。

 みんな気付いていないだけで、本は異世界の扉なんですよ。

 さぁあなたも、気軽に異世界へ旅立ってみませんか?

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