閑話 妖魔の発生と妖鬼の成り立ちについて
「さて、休憩も終わったことだし、再開するよ、準備はいいかい? 章正」
礼子さんが授業再開と言いたげに手を叩き始めたので、俺は慌てて席についた。いかんいかん、前の講義の内容を思い出せない。予習復習が肝心だな……、これは。
(※またまた礼子さんの長い長い講義が始まります。)
「最初のテーマは邪気・瘴気による人間の身体への影響についてだ。邪気・瘴気とは負のエネルギーの塊みたいなもんだから長時間これを浴び続けると被爆して体内に疾患が起こる。まあ放射線みたいなものさね。
アタシらはこれを
Ips→邪気・瘴気が死紋線を出す能力の高さ
Ubi→妖気が吸収された邪気・瘴気のエネルギー量
civikal→邪気・瘴気による人体の影響の高さ
まあこれは専門的になってしまうから、今回の講義で話すのはやめておこう。むしろ、人体に出る影響を詳しく理解しておいてもらいたい。
邪気・瘴気は人々の心の不安、恐怖、憎しみなどの感情に引き寄せられて人々の内側に入り、魂に陰りをもたらす。これにより、心、精神面に支障をきたすわけだ。
まあ、これが一般的な影響だが、許容量以上に取り込むと廃人になってしまう。魂が完全に魔になり、妖魔と化してしまうこともあるそうだが……、この部分は伝承が不確かだから良く分かっていない。
次に妖魔が人間に与える影響だが、妖魔に進化する前、つまり単生物が長い口針を人々の内部まで突き刺して栄養分を吸い出す。栄養分というのは運気、妖気、肉体や魂そのものであったりする。
また妖魔のせいで不幸や病気、心の病が媒介されることもある。まあ現実世界で言うと蚊みたいなもんだ。でもまあ単生物に吸われたぐらいじゃ死の危険性はないから安心しな。ただし、幽霊については未検証だが。
問題は妖魔の方だ。
妖魔は大食いだから、自分がより高位の存在になるために人々の妖気や肉体、魂を根こそぎ喰らい尽くしてしまう。統計上、妖魔に襲われた人間の死亡率は90%を越えると言われているよ。幽霊なども例外じゃなく、魂(妖気)ごと妖魔は捕捉するから、物や生物が体を通過するという性質も奴らには通じない。
そしてアタシらも妖気を身に纏ったり、特定の器官を強化できたりするから幽霊のあんたにも干渉できたりする訳さ。章正も妖魔に襲われた訳だが、何とか魂だけは無事だった、しかし魂というのは肉体という妖気を外部に漏れにくくするガードを失うようなものだから、妖気がだだ漏れになる。
一般人ならまだしも、章正はエンゲみたいに特殊な妖気を持ってるみたいだね。章正が立て続けに襲われた原因は多分それだろう。
だが、もう安心しな。
何があっても章正はアタシ達が守る。
でも、アタシは章正の生存率を少しでも上げるためにも、自衛の手段を持っておいた方がいいと思う。そして章正自身も妖魔の弱点を把握しておくべきだろう。少しでも安全性が上がるなら高めた方が得策だからねぇ。
妖魔はさっきも説明したように環境依存生物だ。妖魔は体表面が多数の邪気・瘴気の結合で構成されているが、その分子同士の結合は妖気によって行われている。この妖気を乱すことによって結合を切る結合を切り妖魔の体の支えをなくし、バラバラに崩壊させるんだ。
これが妖魔攻略法だ。詳しくは今度、実践形式を交えてやってみるとしよう。
さて、ここからは皆気になってる妖鬼について解説していくよ!まず妖鬼と妖魔の違いについてだ。
妖魔は邪気・瘴気と妖気が混合することによって特殊な化学反応が起こり、偶発的に発生するものだが、妖鬼は違う。
妖鬼は妖化星の純粋な妖気である原初の妖気によって形作られる。
原初の妖気とは宇宙誕生日のビックバンのエネルギーを内包した原始的組成の妖気のことを指す。この妖気は万物を生み出すとまで言われていて、現在の妖化星を無から生み出したという逸話があるくらいだ。
人間と違い妖鬼はタンパク質などの有機物で構成された存在ではなく、妖気などの無機物で構成されている。実際妖化星に暮らす大半の妖鬼が原初の妖気を体内の一部に取り込んでいる。
ああ、まず妖化星について簡単に説明しておいた方がいいかもね。妖化星は地球より4億光年離れたメタトロン銀河B-401地区という場所にある。
ただ、ここから実際に4億光年進んだとしても妖化星を観察することはできない。
なぜか……。
それは地球と妖化星が異なる次元上に存在するからだ。まあこの辺は難しいから今は話すのはやめておこう。とりあえず、同じ時間、同じ空間に2つの惑星は存在しないと考えてもらって構わない。
ここまで聞いたら何かピンときたんじゃないかい?
そう、妖鬼とは宇宙人だということに。
世間は未知との遭遇だの未確認飛行物体など騒ぎ立てているが、灯台もと暗しとはこの事だ。太古から自分たちが接してきた妖鬼という生物こそが本物のE.T.なんだよ。妖鬼は何千年も人類と共に進化してきた利害追求性生物だ。決闘至上主義者でもあるけどね。
ちなみに人間と妖鬼は平安時代に交流が盛んになり始めた。記録上では、どこからか地球に落ちた妖鬼を藤原家が保護したことが人間と妖鬼の最初の出会いだと言われている。
まあ実際、アタシもこの時代から生きてる訳だが、まだ小さかったもんで記憶はほとんどない。妖鬼という名称が生まれた理由についても語っておこうか。
その時代はともかく怪異や物の怪が盛んに信仰されてる時代だったから、妖鬼もそれ相応の位置づけが必要だった。平安時代の人達に宇宙人と言っても理解してもらえないから、馴染みのある名称をつけなければならない。それに加え、妖怪とも差別化をはかる必要があったのさ。
最終的に見た目が鬼っぽい妖という風にカテゴライズされて妖鬼という名前が付いた。以後、彼らは現代まで人間と関係を持ち続けている。
今は昔と比べたら交流は減ったね。
あ、そうそう、これを言うのを忘れちゃいけない。妖鬼を妖化星から地球へ呼ぶ方法だ。
まず大前提として地球と妖化星は同じ次元に存在しない。膨大なエネルギーと時間をかければ次元間を移動できなくもないが、それだとリスクも大きいし、効率が悪すぎる。そこで開発されたのが阿部式妖鬼召喚術。
地球と妖化星の間にある次元の狭間という場所に、強制的に通り道を発生させ、妖鬼がスムーズに来れるよう手はずを整える。
そして向こうの星で召喚を希望している妖鬼にリクエストが届く。妖鬼は契約する人の属性、オーラに最も適した者が呼ばれる。それを妖鬼が承認したら転送が開始され、地球にやってけるという訳だね。
でも、ただ呼ぶだけではいけない。妖鬼は地球の環境が苦手だから、それに耐えられるよう人間と感覚を共有する必要がある。それをしないとエンゲのように妖気が霧散して、弱体化してしまう。
それを防ぐために召喚と同時に即座に契約を結べるよう予め召喚の術式に契約の術式を上書きしておく。この召喚術は今でも主流のシステムだよ。当時は画期的で大流行したんだけどねぇ…。
まあ、その話は置いといて、君達の頭にはこんな疑問が浮かんだに違いない。
なぜそこまでして妖鬼を地球に呼ぶのか?
なぜ妖鬼は人間と関係を持つ必要があったのか?
答えは単純だ。彼らは星は違えど高度な知性を持った生物だ。互いに存在価値を提示する必要があった。要するに利害関係を確立していたからこそ妖鬼と人間は共に行動できた。聡明な君ならもう分かっただろう。
そう妖魔の討伐だ。
さっき話したように妖魔は妖気を糧とし、成長していく化け物だ。人間にとっても妖鬼にとっても、妖魔というのは害しかもたらさない。妖魔は地球でしか生まれないが、稀に滅星級となった妖魔が妖化星へと侵出することがあった。
妖魔はエネルギー生命体だから次元間の移動なんてお茶の子さいさいだ。最上位階級の妖魔はいくらアタシ達でも簡単に倒せない。発生したら星丸々1個なくなってしまう程だからねぇ。
まあほとんどの人間は一般級の妖魔にも勝てない。素質があっても、妖魔を倒すのは妖鬼と契約を結ばなければ厳しいだろう。人間だけでは際限なく発生する妖魔を抑えられない。だから、妖魔の発生地点である地球に妖鬼が出向いて、人間と協力し妖魔を屠る必要があった。
人間と妖鬼が協力し、妖魔を倒す。
それを生業としてきた人々が現代まで人々の平和を守ってきたんだ。しかし、最近どうも妖魔の増加が著しい。その原因を詳しく調べる必要があるね。あとこの前君らを襲った日本妖魔連合についても警戒が必要だね。
まあ、今日は以上かな。
それじゃあ、今日の授業はここまで!
お疲れ様!」
神宮寺さんは授業が終わると足早に教室を後にした。
俺は背筋を伸ばし、椅子にもたれかけた。
やっと……、終わった……。う~ん……。難しい……。頭パンクしそうなんですが……。
俺は授業内容を復習すべく、資料の一ページ目から目を通し始めた。
◆◇◆◇◆
一方、その頃エンゲは爆睡していた。
妖気が陽気な妖鬼だYo!!!! nira_kana kingdom @86409189
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