閑話 邪気、瘴気、妖気、妖魔について
※次の章に行く前に何話か閑話を挟みます。
ここでは、邪気、瘴気、妖気、妖魔についてより詳しく解説しています。複雑かつ膨大な内容ですので、そういうのが苦手だよって人はパッと読み飛ばしてもらって構いません。
――――――――――――――――――――
妖気やその他諸々に関する知識がない俺は神宮寺さんの屋敷に匿ってもらう間、勉強することにした。
神宮寺さんは久々に教えがいがある生徒ができたと喜んで授業資料を準備し始めた。
ああ、いつかの学校を思い出すな。
「さて、章正。あんたは邪気、瘴気、妖気という言葉を聞いたことがあるかい?」
「はい、エンゲさんから教えてもらったんですが……、すみません。ちょっと忘れちゃいました」
「そうか。それじゃあ復習を兼ねてもう一度妖気について説明するとしよう。まあ、気楽に聞いてておくれ」
(※ここから、礼子さんの長い長い授業がお送りされます。)
「邪気とは人類の素直でないねじけた気持ち、性質、悪気などを指すよ。
一方で、瘴気とは古代から19世紀末まで、ある種の病気(感染症)を引き起こすと考えられた『悪い空気』のことだよ。昔は気体、または霧のようなエアロゾル状物質と考えられていた。山川の毒気の事を指す場合もあるけどね。
まあ要するに、これらは人から湧き出る負のエネルギーのようなものだよ。
それに対して、一部の人類に特異的に発現した生命エネルギーが変質したものそれが妖気だ。妖気はいわば生きるに欠かせないエネルギー。
人類なら誰しもが少量は持ってるものだし、素質があればそのエネルギーを利用して様々な行動原理に変換できるんだ。アタシ達はそれの応用で妖魔を倒している。
ちなみに、アタシ達の身体からは常に妖気が放出されている状態だ。この漏れ出た妖気のことをオーラと言う。このオーラの放出量を制御することによって攻撃・守備スキルの基盤ができる。
オーラには様々な色があって、その色が各個人の気質に応じて変化するらしい。この色は不変という訳ではなくて、感情の昂りだったり、負のエネルギーの吸着度合いで変化するからまあ強さを測る指標にはならない。
そこで、アタシ達が良く使う単位が妖気量。妖気量=身体から漏れ出た妖気の量(
章正もカリバやエンゲから異様な何かを感じたんじゃないかな?あれは生物の本能が膨大な妖気量に危険信号を発していたというわけなんだ。
また妖気には属性があってね。この図を見てもらいたいんだけど……、
◆◇◆◇◆
❰属性表❱
陽
↑
↑
↑
↑
↑
負←←←←←・→→→→→正
↓
↓
↓
↓
↓
陰
❰縦:本質❱ ❰横:気質❱
◆◇◆◇◆
こんな感じで書き表せる。本質というのは魂に刻まれたその人の性質。主に陰と陽で分けられる。陰キャ陽キャみたいな性格的診断に依存するものじゃなくて、その人自身の魂の明度によって決まるから、こればっかりは生まれつきだ。
気質は肉体の表面上に刻まれた、その人のオーラ。さっきも言ったようにオーラの色はその人の気質によって変化するからこれは本質と違って自在に変えられる。まあ大事なのは本質なんだけどねぇ。
属性判定については、まだ機械による観察手段は確立できてないんだ。だからアタシのような属性を見れる……、自分で言うのもなんだけど、特異的才能に頼るしかない。ただ、才能があったとしても正しい訓練を行わないとその能力をうまく扱えない。要するに、習熟度によって見えるものが変わるという訳だよ。
習熟度0%→何も見えない
習熟度20%→オーラの形まで判別
習熟度40%→オーラの属性まで判別
習熟度60%→オーラの色、顕在妖気量まで判別
習熟度80%→妖気の属性、潜在妖気量まで判別
習熟度100%→妖気の特性、能力、総量まで判別
今まで話してきたように、この邪気・瘴気・妖気の三要素が妖魔を発生させる要因であるのは間違いなかったんだが、不幸にもアタシの理論に技術が追い付いてこなかった。
邪気・瘴気についても、そのエネルギー構造はずっと不明だった。そもそもこの分野に精通する人物が少ないし、実験観察や記録などあらゆる手法が確立されていなかった。これが妖魔研究に対する進歩を妨げていたとも言えるねぇ。
ところがどっこい。誰もやってこなかったことをアタシが研究して、その基本構造を遂に解き明かしたんだ。
まず、邪気・瘴気は中心に
この構造の詳細についてはまだ研究途中だが、妖魔発生に関する重大な受容体と分子を見つけた。それがカプセチノ受容体と中性分子。カプセチノ受容体は妖気を引き寄せる。
妖気と結合した受容体はそこから
c-TMPOCR1という妖気伝達物質が邪紋、または瘴紋に莫大なエネルギーを輸送する。それによって凝子核が肥大化・過密化するという訳だ。
そしてここからが興味深いんだが、妖気と結合した受容体は新たな凝子核となる。その新たな凝子核にまた新しいカプセチノ受容体が生えてくるという訳だ。
そこで活躍するのが中性分子だ。この分子は妖気を引き付けやすくする微弱な念波を発生させる。すると、妖気がどんどん引き寄せられて、また結合と肥大成長を繰り返す。やがてそれらは複雑な組織・器官へと変化していく。これらが何千回、何万回も繰り返されると自立して移動する単生物が発生し、人々の生気、つまり妖気を吸収するようになっていく。
そんな単生物から運良く妖魔に進化できるのは全体の20%だよ。妖魔の姿は単生物が吸収した人々の妖気に刻まれた記憶をベースにしているらしいねぇ。その人が蟷螂が強烈に印象に残っていれば蟷螂の妖魔が生まれるし、地震を恐れたりする心を持っていると鯰の妖魔になったりする。
つまり、妖魔とは究極の環境依存生物だ。
妖魔を発生させないためには大元の邪気・瘴気を発生させないようにすればいいのだが、それははっきり言って不可能だ。人々あるいは他の生物が生活する限り、これらは必ず発生するものだし、第一コスパが悪すぎる。
だから妖魔自体を倒すという現状維持を取るしかないが、まあ数を押さえ続けるのもアタシ達の役目だ。妖魔には階級があるよ。
章正が遭遇したことあるのは大破級までかな? まああれでも下から数えた方が早いということだけは覚えておいてもらおうか。
さて、妖気について解説してきたけど、分かったかい? 少し休んでから、妖鬼や妖魔が及ぼす影響について教えていくよ!」
神宮寺さんは次の資料の準備をし始めた。
う~ん……、感想言っていい?
これはれっきとした、詰め込み教育だな。
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