変人の友人がいるやつはだいたい変人

ユラカモマ

変人の友人がいるやつはだいたい変人

 幼馴染みの明は変わっている。例えば妙に黒いオーラを放つくまのぬいぐるみを机上に置いていても3日クラスの誰からも突っ込まれないぐらいに…!

「あら、私ぬいぐるみなんて持ってきていないのだけれど…もしかしてこの子かしら?」

「それ!」

 見せられた写真はクリーム色でピンクのリボンを着けた30センチほどのくまのぬいぐるみだ。黒いオーラでくすんで見えるが形やリボンが全く同じである。

「この子、どうしたの?」

「それがね~、この間"ひとりかくれんぼ"という遊びに興じてみたのだけれど…」

「ちょっと危ないことしないでって!」

「ごめんなさい、好奇心が押さえられなくて。でね、やってみたはいいけれど最後失敗しちゃたのよ」

「今度は何やらかしたの?」

「倉が1つ…見つからないなら焼き払えばいいと思ったのだけれどやはり除霊はルールに則らないとダメなのね、悲しいわ」

「自主的にやらかしておいて思いっき"めんどい"って顔しないでくれる?」

 増えた予定を書き加えて、あーぁと要は肩を落とした。


 明の家は古く広い家なので、倉が複数ある。そのなかで今回明の被害を被ったのは一番そ隅にあった小さいものらしい。

「ここよ、倉があった場所。でもあなたには言わなくても分かるかしら」

「えぇ、随分歓迎されているようよ。ほら、扉が開いた」

「あらまぁ」

 ぽっかりと開いた黒い空間、覗いても何も見えないが確かに感じる"いる"という気配を感じた。背筋はきふ

 倉(仮)に入るとあのくまがまとっていた黒オーラ漂っているせいでまだらに暗かった。古く見えるのに歩いても足音1つならないのはここがあのくまのテリトリーの内だからだろうか。さらになんだがくま以外にも複数そ禍々しい気配…これは帰ったら余罪を追及しなければとしくしく痛む腹をさする。

「明これ以上余計なことしな…」

「あら素敵なものがあるわ~」

「あ、ちょっと?!」


 倉の奥までたどり着いた時には、2人そろってボロボロだった。主に明のせいで。元々妙な物が多くある場所なのに明はわざわざ眠っている物を目覚めさせながら歩いて来たのだ。だから仕掛けられてもいないのにボロボロ。これからボス戦なのに。黒いオーラが濃くなって嫌な気配が近くなる。

「もお"いい"かい"ぃぃィィ………?」

 低く濁った声が脳髄に響き、視界に自立運動するくまが目に入る。教室にいたあのクリーム色のくまだ。かわいらしいピンクのリボンが滑稽なほどおどろおどろしいかオーラを振り撒いている。

「見い"つげだぁ"ぁ"ぁ"!!!」

「あららぁ、怖くなっちゃってぇ」

 ぬいぐるみは明に向かって一直線に襲いかかる。低い不気味な声と合わさって私はゾワゾワ鳥肌がおさまらないのだが明はなぜか楽しそうだ。

「明、さっき教えたやつ!」

「はいはーい、"隠行皆々采叉赫"…くまの助、ごめんなさい、この勝負は私の勝ち!×3」

 明の高らかな勝利宣言でぬいぐるみの黒いオーラが散っていく。本来の手順とは少し違うが呪の助けもありきちんと儀式を終わらせられたらしい。オーラが消えるとともに崩れていく倉を中から見ながら私は静かに息をついた。


「ねぇ、くまの助本当に明がご主人でいいの? もう愛想尽かしたら?」

「いえ、ぬいぐるみとしてご主人がご主人である以上、僕にとってのご主人はご主人なのです。それにご主人のおかげで今の僕があると思えば…!」

「そう。なら私が言うことはないけど」

 倉が消えた跡地には、私たちと"ひとりかくれんぼ"に使われたくまのぬいぐるみーくまの助だけが残された。くまの助についてきちんと供養するよう私は勧めたのだが、明は興味がわいたから引き取ると言った。するとどういうわけかぬいぐるみであるくまの助が目をまたたかせ喋りだしたのだ。ひとりかくれんぼの影響か、それとも明の影響か分からないがこうして目覚めたぬいぐるみは明をご主人と呼び、健気に慕っている。

「変わってるねー」

(僕からするとあなたも変わっているのではと思うのですが)

くまの助はそう思ったが言わなかった。なんせ彼はぬいぐるみなので。


 もし、あなたが今後ぬいぐるみを連れた少女に会ったとしても話しかけてはいけない。これ以上の面倒ごとに巻き込まれるのは後免だからお願いね。



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変人の友人がいるやつはだいたい変人 ユラカモマ @yura8812

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