おしまい

「俺の妹がこんなに可愛いわけが……あるんだよなぁ」

「いきなりどうしたよ……」

「ははっ、なんかスッキリしたみたいじゃないか」


 そりゃあもうスッキリしまくりだよ。

 ここ最近、今までに比べて圧倒的に機嫌の良い俺を見て利信や力哉、そして篠崎さんもよく声を掛けてくる。


「……むふふっ♪」

「おい、一体何があったんだよ!」

「良いじゃねえか。つうかもう立ち直ったのか?」

「ミュウのことは言うなああああああっ!!」


 後ろで騒ぐ二人をうるさいなと思いつつ、俺はここ最近のことを振り返った。

 俺と美羽が正式に付き合うことになって二週間程度が経過し、そろそろ夏休みがやってくる頃合いだ。

 一応俺たちの関係は父さんと母さんのみに伝えており、二人とも心の底から祝福してくれ、美羽に関してはありがたいことに俺と恋人になれたことと、家族から大々的に受け入れられたことに涙を流していた。


『良かった……良かったよぉ……っ!』


 あの美羽が泣いた……っ! なんて揶揄うこともせず、俺はジッと彼女を抱きしめていたのだが……あんなに喜ばれてしまっては、死んでもあの子のことを裏切れないぞと自分の戒めになった。

 まあ裏切るなんてことは絶対にないが……そんなことになったら父さんと母さんに殺されちまう。


(……思った以上に何もないんだよなぁ)


 意外だったのはこの二週間、特に美羽と変わったことはしていない。

 めっちゃ期待してた……うん。隠しても仕方ないので言ってしまうけど、俺はいつもエッチに攻めてきていた美羽と恋人関係になったのだから、それはもう言葉に出すのも憚れることばかりすると思っていたんだが……どうも美羽は今の関係に大変満足してしまっているようで、これ以上を望むと罰が当たるとでも思っているのかただただ俺に引っ付くだけで喜んでいる。


『あはは……まああれだよね。嬉しさで満足しちゃう♪』


 もうね……妹が可愛くて仕方ない。

 かといってあの子が色仕掛けをしてこないわけでもなく、普通に体を押し付けたりはしてくるので……まあ俺もそれだけで満足していた。

 大好きな彼女が傍に居るだけでも幸せなのに、そんな風に愛情表現をされたら心が満たされるのも当然だ。


「その様子だと上手く行ったのか?」

「っ……まあな」


 何となく察している様子の力哉には頷いておく。

 決して明言したわけではないし、俺も美羽も学校では今まで通りの様子を貫き続けているため、誰も俺たちが付き合っているなんて考えられるわけもない。

 もちろん学校で出会えば普通の兄妹のように話をするが、そんな俺たちのリミッターが外れるのは基本的に家に帰ってからだ。


(早く帰って美羽とイチャイチャしてえぜ……ったく、こんな風に思う日が来るなんて思わなかったな)


 それは本当にそう思っている。

 だが……これで満足してはいけないのが兄であり彼氏ってやつだと思っており、俺がこれから頑張るのはあの子を……美羽を守っていくことだ。

 それは今までと特に変わりはないかもしれない……けれど今まで以上に、俺はあの子のことを愛して守り抜く……絶対にだ。


「……どんだけ好きなんだって話だ」


 だから、はよ美羽に会いたい。

 それからその日は何事もなく、それこそ特別なことは一切起きずに時間は流れて行った。

 いつもより緩やかに感じたのは美羽とのことを考えていたからか……終礼が終わりすぐに教室を出た後、校門で待っていた美羽と合流した。


「ねえ兄さん」

「うん?」

「めっちゃ手を繋ぎたい。抱き着きたい。キスしたい」

「……怒涛の攻めが心地良いぜ」

「おっぱいとか色々触ってほしい」

「っ!?」


 ……とまあ、実際にそういうことをしなくても平気でこの子はこんなことを言ってくるので、その度に俺は理性を試されてしまう。

 そんな美羽と甘ったるい雰囲気を醸し出しながらも、ようやく家に着いて俺たちの時間が始まる。


「兄さん!」


 ギュッと、美羽が抱き着いてきた。

 最近はもう家に帰ったらとにかくこれで、風呂や夕飯の準備など……後はトイレなどを除けば基本的に美羽はこうして俺に引っ付いている。

 四六時中というわけではないが、とにかく抱き着かれることに俺は鬱陶しさをもしかしたら感じるかもと考えたことはあった……でもそれは全く以て無意味なものであることを知ったのも、今の俺の様子を見れば誰だって分かることだ。


「……幸せや」


 そう、幸せ以外に出てくる言葉が見当たらない。

 ただ……今日に関しては美羽の様子がいつもと違うと言うか、どこか決意を秘めたような顔だったのには気付いていた。

 しかしそれ以降は特にそんな表情は見られず、普通に夜になって寝る時間に。

 明日は休みなのでまだまだお互いに寝るつもりはなく、美羽もまだ俺とたくさん話をしたいと言っていた。


「……ねえ兄さん」

「うん?」

「明日はお休みだよね? あたし、今日こそは兄さんとしたいかな」

「したい……したい?」


 したい……死体? 肢体? ……したい?


「この期に及んで分からないフリするの? 兄さんとエッチがしたいの」

「……………」


 ……なんだろう、この直接言われることで脳が揺らされる感覚は。

 俺を揶揄うようにニヤニヤしている彼女だが、いつも以上に頬は赤く照れていることが見て取れる。


「あたし……最近は最高に幸せ過ぎて満足してたけど、やっぱりそういうことも常に考えているわけですよぉ」

「……おう」

「兄さんだってほら、我慢出来なさそうだしぃ?」


 それは……確かにそうだな。

 ただ、俺はこの状況にそのまま流されることはなく、抱いていた決意というか気持ちを彼女に伝えることにした。


「俺だって美羽とそういうことをしたい……だから約束するよ。これまで以上に俺は美羽のことを想い続ける。愛してるよ美羽」

「うん! あたしだって愛してるんだから!」


 ちなみに、俺はここまで本当にするとは考えていなかった。

 しかし美羽がどこからともなく四角い箱を取り出し……その時点で俺は彼女の本気を受け取る形になり、後はもうなるようになるしかなかった。

 数時間後、俺と美羽はお互いに裸で抱き合っている。


「凄かったね……」

「……おう」


 一言で感想を言うならとても凄かった……なんというか、確かに恥ずかしい行為であることに変わりはないんだけど、もっともっと美羽のことを好きになれる気がしたし、彼女のことを想う気持ちが更に強くなった。


「あたしさ……色々と攻めまくったけど、心のどこかに兄さんとこんな関係になれると思ってなかったの。あたしなんかよりも、兄さんにはもっと良い人が居ると思ってたから」

「お前の中で俺はどんなに凄い奴なんだよ」

「凄いよ……凄すぎるお兄ちゃんだよ。でもね? だからこそ思ったの――あたしは絶対に兄さんの彼女になる。絶対兄さんはメロメロにするって……だって好きになったから……兄さん以外見れなくなったから」

「……………」


 あまりにも強い視線を受け、俺は一瞬唖然としたがすぐに美羽の頭を撫でた。


「だとしたらものの見事にメロメロにされちまったな……だってもう、俺たちはこんなにも分かりやすい関係だ」

「ふふっ、そうだねぇ♪ ねえ兄さん」

「うん?」

「あの漫画の妹ちゃんと同じことしても良いんだよ? むしろ、真似するように同じシチュエーションを楽しんじゃう?」

「っ!?!?」


 それは正に悪魔の囁きだった。

 美羽とすることならなんだって嬉しいのは確かなのに……大好きな漫画の再現をチラつかせられるととてつもなく心が震える。

 ……まあでも、やっぱり傍にこの子が居るのが一番だ。


「何にせよ美羽が傍にいてくれたら俺は良いよ」

「あたしも……ずっと一緒に居てね兄さん」

「もちろんだ。何があっても傍に居る……美羽を守るって、お兄ちゃんは約束したからな」

「……うん。大好き、お兄ちゃん♪」


 彼女の笑顔と温もり、そして至高の柔らかさに包まれながら……俺たちの初めての夜は過ぎ去っていき……俺たちはもう、絶対に離れない誓いを結んだ。

 義理とはいえ妹と恋人になるということ……その相手が美羽であることに幸せを感じながら、俺はこれからもずっと彼女との日々を歩み続けていくんだ。




【あとがき】


ということで今作はこれで終わりです。

元々中編の予定だったので良い文字数にもなったんじゃないかと思います。

エッチなギャル妹……書いてる時も本当に楽しかったです(笑)

それではみなさん、読んでくださってありがとうございました。

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外では陰キャで家ではギャル〜俺の前で見せる義妹の本当の姿に色々耐えるのが大変です~ みょん @tsukasa1992

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