妹が可愛すぎる

「……っ!?」


 朝、目が覚めるとドアップで美羽の顔があった。

 体が震えるほどに驚きはしたものの、鮮明に昨晩のことも全部思い出し段々と落ち着いていった。


「……そうか。そうだったな」


 昨晩、俺と美羽は彼氏彼女の関係になった。

 しっかりと手順を踏んだ告白をしたわけでもなく、胸に秘める想いを一生懸命に伝えたわけでもない……俺たちは本当に呆気なくお互いの気持ちを伝え合い、恋人という形になった。


「ま、それも仕方ないか」


 そもそもが兄妹として過ごしていた分の時間があるため、どんなに特別な気持ちを抱いたとしても、特別な関係になったとしても分かりやすい変化はない。

 だって誰に何を言われようと、どう指摘されようとも俺たちは兄妹だからだ。

 きっと恋人らしくしようとしても俺たちのやり取りは今までと変わらないだろうし何より、普通の恋人たちと違って一つ屋根の下に住んでいるんだから。


「……とはいえ」


 俺はジッと美羽を見つめてみた。

 布団の中で俺に引っ付くようにジッと眠っている彼女だが、まるで目が覚めた俺へのサプライズかのようにとある桃源郷が用意されていた。

 それはパジャマの上から外された二つのボタンのせいで、彼女の豊満な谷間が露になっている光景だ。


「っ……むぅ」


 可愛らしい声を出し、彼女はそのまま体勢を変えた。

 俺の方に体を向けていた体勢から仰向けへと変わり、両手も左右に広がるようにしている。


「おぉ……」


 重たそうなHカップの胸がその重みに耐えられないように、横向きの状態では見られなかった谷間がグッと左右に広がるその光景は中々に刺激的で……朝から俺も元気をビンビンにもらえる素晴らしい光景だった。


「なんか……もう吹っ切れたな」


 美羽と恋人になった――その事実がどうも今まではこういうことに興奮しながらも悪いことだと感じていたが、その悪いことだという認識を既に抱くことはない。

 だって恋人だし? もう遠慮は要らないし、そもそも罪になるわけでもない。


「すぅ……すぅ……」


 美羽の呼吸に合わせて上下に動く胸をジッと見つめながら、俺はスマホを手に取ってTwitterを起動する。

 そしてミュウのアカウントに飛んで昨日の投稿に目を通したのだが……そこには正にこの世の地獄とも言える光景が広がっていた。


・彼氏……はっ?

・嘘だよね? 嘘だよね!?

・みんな信じるなよたぶんアカウント乗っ取られたんだ

・いや、それにしてはミュウが映ってるだろ!

・だから乗っ取って加工してるんだよみんなを離れさせるために

・だよな。じゃないと今まで何もなかったのにいきなりこれはおかしい

・草

・彼氏出来た報告なんだから祝ってやれよ

・黙れ殺すぞ


 もうね……それはもう大変なことになっていた。

 俺も美羽も特定は不可能なほどに加工は入っているが、それでも今までミュウを見てきた人からすればそれがミュウであることは分かる。

 ミュウは……美羽は決して誰ともやり取りをしていない。

 だからこそ偶像的なアイドルとして君臨していたが、それがこうして男との匂わせ以上の投稿をしたことで……まあこういうことになっているわけだ。


「不思議なもんだよな。美羽は何かを呟いたわけじゃなくて、他のレイヤーみたいに写真を上げてただけなのにこれだ……顔出ししてる配信者とかなら分かるんだけど」


 ちなみに美羽と同じように際どい写真を投稿している人のアカウントを見てみたがまあまあリプ欄は似たようなものだった。

 もちろん彼氏の有無は明言していないものの、ガチ恋していると思われる人たちの多いこと多いこと……ま、この人たちは顔を出しているけどさ。


・素晴らしいおっぱいですね!

・埋まりたい

・ナイスです!

・最高!


 とまあこんな感じだ。

 この人も何か匂わせをしたり、誰かとの関係を口にしたら美羽みたいなことになるかと思うと……やっぱり大変なんだなぁ。


「リプなんてどうでも良いし、あたし自身何か活動をしているわけじゃないから本当に気にならないんだよね。こうして投稿している写真だけで勝手に恋人みたいに思われてるとかヤバいよねぇ」

「起きてたのか!?」

「ついさっきねぇ♪」


 いきなり声が聞こえてビックリしたぞ……。

 美羽は寝転がったままの姿勢で目を開けており、彼女は俺の大好きな笑顔で言葉を続けた。


「おはよう兄さん♪」

「……あぁ。おはよう美羽」


 いやいや、本当にどうして美羽の笑顔ってこう……最高なんだろうか。

 どんなに辛いことがあったとしても、どんなピンチになったとしてもこの笑顔を思い浮かべたらどんなことだって乗り越えられそうだし、それこそ勇者の剣を抜いて魔王だって倒せる気がする。


「兄さん、ちょっと良い?」

「うん?」

「あたしのここに腕を入れてくれない?」

「……わっつ?」


 あたしのここ……そう言って美羽が指を刺したのは膨らんだ二つの胸の間だ。

 さっきも言ったが重力に逆らえずに左右に広がる谷間……えっと、彼女は一体何を言っているんだい? お兄ちゃんには分からないよ。


「ほら、こうだってば!」


 美羽は俺の腕を掴んで胸の中心に置く……そして、彼女は両手で胸を支えるように俺の腕を挟み込み……っ!?


「ふふっ、兄さんはこういうことに興味はない?」


 俺の腕を挟んで上下に動かし……俺はスッと腕を抜いてピシッとチョップした。


「あいたっ!?」

「このエロ妹が! 朝から兄を誘惑するんじゃない!」

「えぇ……良いじゃんか別にさぁ。あたしたちもう恋人なんだし……恋人だもん」


 後半は消え入るような声で、彼女は照れ臭そうに言った。

 今の今まで完全に俺を揶揄う素振りを見せていたくせに、新たな関係になったことが本当に嬉しそうに彼女は照れている。

 ……こんなの文句を言う気にはなれないし、逆に美羽可愛いしか脳裏に言葉として出てこないんだが?


「……そうだな。恋人だな」


 取り敢えず、やっぱり朝からこの光景は目に毒だ。

 俺は自然な動作で美羽のパジャマに手を掛け、ボタンを留めようとする……こぼれようとする胸を収納するかのようにボタンを留めると、正に一仕事した後のような疲れが出てきた。


「兄さんったら大胆~♪」


 ぐぅ……ええい、好きに言うがいいよもう。

 さてさて、こうして俺と美羽が恋人になって初めての朝だが……これから色んな意味で大変だなと思いつつも、これからの日々にワクワクしているのも確かだった。


「ほら、はよ起きるぞ」

「は~い♪」


 はぁ……一々可愛い。

 返事すらも可愛くて本当に美羽のこと好きだわ。



【あとがき】


次か次の次で終わり

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