第23話働く魔術師 (3)
ユリ①
「女性のヒモ生活とか最低!あなたは人間のクズだよ。男で恵まれた体と顔を持っているのに、人のお金で生活とか、ヤバすぎでしょ?人として、生物として終わっていますよ。」
「は、長谷川さん。」
「ミホリンは少し黙ってて。真さん。いえ、この寄生虫!私のミホリンのお金を吸わないでください。しっかり働きなさいよ。もし、私のミホリンのヒモになるのなら、容赦はしません!さっさとどっか、お行きなさい。この、ドブネズミ!いえ、ゴミ以下よ。せいぜい、社会の役ぐらいには立ちなさいよ。」
こんなクズがミホリンと暮らしてるなんてありえない。私のミホリンを穢している。
私は相手の心が折れるぐらいまで罵倒した。
しかし、顔色はあまり変わっていない。
「ドブネズミって何ですか?」
突然、寄生虫がミホに質問した。
は?こいつはどんだけバカなの?
「えーっと、すごくでかくて臭いネズミのことです。」
真面目に答えるミホリン。腕を大きく広げて表現するなんて、カワイイなぁ………って、そうじゃない。
私はミホリンに囁いた。
「ねえ。こいつ、世界遺産級のバカなの?」
「あ、いや~。……実は真さんは記憶喪失で、5日前に出会って家に泊まってもらっているんです。」
なるほど。うん。いろいろと疑問がある。
「あのさあ、‥‥…」
「長谷川さん!それ以上は、聞かないでください。ねっ?」
ザ・無意識上目遣い、じゃん。可愛すぎる♡。
ま、まあ。ミホリンがそこまで言うんだったら、聞かないでおこう。疑問はいろいろとあるが。
「あ、そう。いろいろあるなら仕方ない。私が紹介するよ。」
「ありがとう!!!」
すると突然、寄生虫が話し出した。
「ねー、ミーホ。失礼だけど、この人って凄いの?」
わ、私のことを知らないだと。史上3人目、女性初の『国王最優秀賞』を受賞した私のことを??きさま!!
いや、それよりも今、『ミーホ』って言ってなかったか?
「うん、凄い人だよ。」
「へー。」
興味なさげに返答する寄生虫。こ、こいつ。
でも、
「本当に記憶喪失なのね。気の毒に、同情するわ。改めて、私の名前は長谷川ユリ。よろしく。」
「我の名前は筒竹真。よろしく。」
私たちは手を取り合った。
本当は寄生虫の手なんかに触れたくないが、仕方がない。
すると、なぜか急に寄生虫が泣き出した。
「す、すごいぞ君。『我』の一人称を笑わないとは!」
すごく感激されている。なんで?まあ、いろいろな業界に行くといろいろな人に会うから、一人称ぐらいはあまり気にしない。
私はいろいろな業界で顔が利くから、大抵の仕事は紹介できる。
だからこそ寄生虫には、一番過酷なところを紹介する。
「とりあえず、ある所に行きます。」
そう言って、私は2人を連れて行った。
車で30分。もちろん私は運転免許を持っている。1ヶ月前に、5日間で取った。
東京八王子にある、目的の場所に向かった。そこは、クズにはちょうど良い働き場所だった。
「着いたよ。」
私は2人に言った。
寄生虫が年上だろうと関係ない。こいつは虫ケラ以下、ということで扱う。
私は動きやすい格好に着替えた。そして、2人を目的の場所まで連れて行った。
「ここって。」
この場所を見て、声を出すミホリン。
「そう。『野獣ハンター』八王子支部だよ。」
「『野獣ハンター』?」
案の定、寄生虫は首を傾げた。
「寄生……真さんは本当に何も知らないんですね?」
「お恥ずかしながら。」
「まあいいわ。まず『野獣』と呼ばれる、妖術や突然変異により普通の生物が巨大化した生き物がこの世界にはいるの。それを倒して、市民を守ったり、お金を稼ぐ職業を『野獣ハンター』と言うの。野獣はものすごく大きくて、畑を荒らしたり、人や町を襲うのよ。その大きさと想定される被害状況によってランクが分かれているの。ちなみに、あなたが妄想していそうな魔物とかアニメ世界の生物じゃないから。現実だから、この職業はチートとかそんな簡単な世界じゃないよ。」
「はあ。」
こんなクズの心をへし折るには、ピッタリな職業だ。
「主に下から、E、D、C、B、A、Sの級に分かれているの。そして、それに応じて、ハンターもランク分けされていて、適応したランクの野獣を狩るのよ。」
「真さん。要はアニメのギルド的な感じですよ。」
「へ~なるほど。ちなみにユーリさんは?」
こいつ、今、私のことをユーリって呼んだな。誰がお前に許可した!
まあ、いい。
「私は5年前に入って、今はS級よ。」
「へー、すごいんですね。」
クズ男は言った。
心にもないことを言うような言い方。
「長谷川さんはすごいですよ。毎月ランキングでは1位だし、きれいでカッコよくて、しかも強くて……」
私のことを褒めてくれる!あ~食べたくなる♡。
「とりあえず、あなたには、ハンターになるための試験を受けてもらいます。」
「ちょ、ちょっと待って、長谷川さん。ハンターって危険な仕事だよ。真さんができるのかな?」
寄生虫の心配をするミホリン、天使過ぎる。でもね、この大馬鹿ヒモ野郎には少し痛い目を見てもらわないと。
「大丈夫ですよ、ミーホ!」
そう言ってほほ笑む寄生虫。
だが、その目は笑っていなかった。
獲物を狩るハンターの目のように、一瞬見えた。
背筋に悪寒が走った。
き、気のせいよ。こんな奴、強いはずがない。
私は自分に言い聞かせた。
地球?で、目覚めた最強魔術師! 〜この時代もまた無双する〜 スクール H @school-J-H
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