第22話働く魔術師 (2)

ユリ①


 音のする方を見ると、ミホリンこと大空美穂がいた。

「ミホリーン!こっちこっち!」

手を振りながら私は言った。

本当は抱きつきたいけど、なんとかこらえた。

「長谷川さん、久しぶりです。」

お辞儀する。

可愛い♡!勢いよくお辞儀するミホリンが可愛すぎる!!

「ミホリン、久しぶり。」

「は、長谷川さん。その名前で呼ばないでください。」

照れてるミホリンも可愛い♡♡!

「いつものように、ユーリンと呼んでいいのよ!」

嘘だけど。

「ちょ、嘘はやめてくださ~い。」

あ~可愛い!つい、いじりたくなってしまう。

「そ、それよりも、待ちませんでした?」

「いや、今来たところ。」

本当は2時間前だけど。

「そうですか、よかったです。」

笑顔で言うミホリン。

ドキッ♡

やだ可愛い。何この娘。女性も魅了するなんて。

「あの~、ミーホ。」

ミホリンと話をしていると、どこからか男性の声がした。

「あ!そうでした。長谷川さん、こちらが紹介したい人で、筒竹真さん。」

「どうも、筒竹真です。よろしく。」

私は男を見て顔をひきつらせた。

まさかミホリンが男を連れてくるとは。

全身で男を警戒した。

「彼氏?」

ミホリンに聞いた。

「ち、違います。」

慌てて答えるミホリン。怪しい。

「じゃあ奴隷?」

「違います!」

「お兄さん。」

「NO!」

「いとこ。」

「ち・が・う!」

「ま、まさか、主人。」

「違いますよ。そんな関係じゃありません。」

う~ん。怪しい。

「そ、その~真さんは…。」

男をちらりと見て、ミホリンは言った。

「同棲しているだけの友人です。」

同棲、同棲、どうせい、ドウセイ……。

え!あの、同じ性別の『同性』ではなく、同じ家に住んでいる『同棲』だよね。

それはほとんど彼氏だよね。

「ミ、ミホリン。変なことされてない?大丈夫?ねえ、相談乗るよ。」

「大丈夫ですよ。」

男を見ながら答えるミホリン。

私は男を睨んだ。

身長は私より少し高いくらいで、スラリとしていて、モデルでもやっていけそうなレベルではある。顔も合格点以上。

でも、試験はこれから。

「こんにちは、真さん♡。長谷川ユリと申します。よろしくお願いします♡。」

上目遣いで、胸を突き出し、髪を耳にかきあげ、甘い声で、あいさつした。普通だったら、ほとんどの男性が私の顔をジロジロとみて、顔を赤くする。

「よろしくお願いします。」

男は私の目を見て答えた。

な、なんだと!!私と目を合わせて普通に言ったぞ。

私の殺気と誘惑もものともせず。くっ、手強い。

だったら。

「!あ、すいません。」

私はつまづいて倒れるふりをして、彼に胸を押し付ける。私の甘い香水も嗅いだはず。どう?これで男たちは全て落ちるわ。

「?大丈夫ですか?お怪我のないように。」

な、なんということだ。私が倒れても慌てず、紳士的に私を心配する。私に反応することなく。

仕方ないわ。もし、少しでも私の誘惑に反応してれば、この男をミホリンに近づけないようにしようと思ったけれど、ひとまず引くしかないわね。

少しムッとしているミホリン。

やっぱりなんか怪しいぞ、この2人。

でも、考えても何も始まらない。

「では、座りましょう。」

私たちは座り、少し世間話をして、本題に入った。

「で、ミホリン。彼が仕事を探しているの?」

「うん。」

こいつ仕事をしていないとは。

「?ミホリンの家にいるんだよね?」

「うん。」

「貯金とかはあるの?」

間をおいて、男が答える。

「い、いえ。ありません。」

「食事代とかはどっちが出しているの?」

すると、男が顔を背けた。

「ま、まさか。」

「私が出しているよ。」

真顔で言うミホリン。

「き、きさま!」

「は、長谷川さん!」

私は男に近づき、罵声を浴びせた。

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