第21話働く魔術師

マレット④


この星で目覚めて早5日。

俺は今、暇している。たぶんアニメキャラなら、こう言うだろう。

「絶賛引きこもり中。」

自分で言って悲しくなる。

そう、俺は今働いていない。現代日本で言うところの、いわゆる『ニート』である。

紳士たる俺が、な、なんと……ヒモである。カナシイ...


4日前に区役所に行き、『催眠』を使って戸籍登録を済ませたまではいい。だが、いくら探しても働く場所は見つからなかった。いや正確に言えば、仕事はあるが俺の条件に合う職場が見当たらない。

ちなみに俺の偽名は、『筒竹 真』である。ミホに相談し、決めた。

それにしても、この時代の文化は凄すぎる。乗り物はもちろん、娯楽や教育などのレベルも高い。

今俺が見ている『テレビ』もそうだ。四角くて薄型の黒い箱、と思ったら、中で人が喋って動いている。他にもすごい技術ばかりだ。

俺が今、はまっている……はまらされたのは、読書とアニメを見ることだ。

ミホがおすすめしてくるから見たり読んだりしたら、もうどっぷりはまってしまった。ただ、なぜか親しみを感じる。

 『人間』と言う種族の発想力は凄すぎる。

魔法を使えないにもかかわらず、想像力で『魔法』を作り出している。

人間恐るべし!!!

 

 いや、そんなことより仕事だ。

今日はミホの友達に会って、仕事を紹介してもらうことになっている。

俺は服を着替えて、ミホと一緒に外出した。


 ユリ①


 私の名前は、長谷川ユリ。

今年で20歳の現役JDで、ハーバード大学の二年生。

自分で言うのも変だけど、私はスポーツも勉強もオールステータス100億点。

どのぐらい凄いかですって?教えてあげましょう!

 小・中・高の時に、バスケや野球、サッカー、それに水泳、サーフィン、剣道、柔道などのチーム戦から個人戦、武術を含むあらゆるスポーツで全国優勝、さらに最優秀賞も手にしている。小さい頃から、一度で目で見た動作は完全模写し、すぐに動作再現できる特殊能力があった。そのおかげかも?

 まだまだこれから!

それから、将棋に囲碁、eスポーツ、茶道や美術、音楽などの大会やコンクールでも、優秀な成績を収めている。テヘペロ!その代わり、習い事も超過密スケジュールだった。よくやったよ私。我ながら、自分を誉めたい。

まあ、そんなこんなで、私についたあだ名が『欲張りユーリン』。またの名を、『経験者殺し』。欲張りユーリンはまだカワイイけれど、経験者殺しはちょっとヒドくない?

模試は常に満点で、クイズ大会も出れば優勝。知識はどの分野においても研究者以上と自負している。

 そして、ついに2年前、国から『文化人国王最優秀賞』を頂いた。なんと史上3人目。女性では初だった。18歳になった私は、日本全国の大学からの誘いを蹴って、ハーバード大学の入学試験を受け、難なく合格。

しかし、すぐに飛び級。わずか1年半で、卒業までの必要単位を取得してしまった。私は『最優秀特待生』として、好きな時に大学に戻れる権利をもらった。

 もちろん文武だけじゃない。美も極め、今はモデルや女優としての活動も始めている。

黒長髪に長身、胸は……ひ・み・つ。

そう、だから私に足りなものはない!!!!!!!!


 なんで私がこんなに自信満々で、テンションが高いかって?

だって今日は美穂に2か月ぶりに会えるんだもん!!!

あ~~~、会いたくてしょうがない。何か友達に仕事を紹介紹介してほしい、って美穂が言っていたけれど、美穂のためならOK!!!美穂のためだった何だってする。

私は同性愛者ではない(付き合うことはある。)。

ただ……ミホリンが可愛すぎる!!!!!

小顔で身長も小柄。子供っぽくて、天然。

でも、その可愛さの裏にある過去は壮絶。

想像すると……食べたくなる!!!!

落ち着け私。

私は完璧。変なことは考えない。

でも、ミホリンに早く会いたい。

会いたすぎて、待ち合わせの2時間前にはカフェに入ってしまっていた。

紅茶を飲みながら時計を見る。

そろそろ来るはず。

「カラン。」

店のドアが開く音がした。


マレットは知らない。ある意味で彼は、ここで最強の敵に出会うことを。

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