【KAC】おともだち
譚月遊生季
おともだち
りなちゃんね、最近学校に来ないの。
クラスの子がいじわるしたから、来れなくなっちゃったんだって。
りなちゃんは何もしてないのに、話すたびくすくす笑ったり、話しかけても無視したり、給食を配っても受け取ってくれなかったんだって。
靴を隠したり、机に落書きしたり、椅子を引いたり、画びょうで刺したり、髪の毛を掴んだり、階段の上から押したりするんだって。
全部、りなちゃんが教えてくれた。
保健室で泣きながら、ぼくに教えてくれた。
この学校の子、酷いよね。
りなちゃんだけだよ。抱き締めて「おともだちができた!」って言ってくれたの。
みんな叩いたり、おめめを取ったり、腕をちぎったり、壁に投げつけたりするんだ。
酷いね、みんな。
だから、ぼく、がんばることにしたんだ。
りなちゃんがまた、学校に来られるように。
髪の毛を掴んだり、階段の上から押したり、画びょうを刺したり、叩いたり、投げつけたり、おめめを取ったり、腕をちぎったり……
みんな、自分にやられるのは嫌みたいだね。
大丈夫だよ、りなちゃん。ぼくはきみの「おともだち」だから。
いつだって、きみの味方だよ。
また学校においで。一緒に遊ぼうよ。
***
最近ね、誰も、学校に来ないの。
色んな怖い事件があったから、お休みになっちゃったんだって。
変だなぁ。りなちゃんがいじわるされても、ケガしても、お休みになんかならなかったのに。ぼくがいじわるされても、おめめや腕が片方なくなっても、りなちゃん以外誰も気にしなかったのに。
「犯人はまだ分からないのか?」
「正体不明らしい」
「……嫌な話だ。早く、捕まってくれんかね」
見回りのおじさん達が、なんだか難しい話をしてる。
「……ん?」
「どうした?」
「いや……」
おじさんのシワだらけの手が、棚に座ったぼくに伸びる。
あーあ。たいくつだな。
りなちゃん、早く来てくれないかなぁ。
「このクマ、最初から赤色だったかね?」
【KAC】おともだち 譚月遊生季 @under_moon
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます