キャンペーンで都合が良い!

維 黎

都合が良い話

 ガスドのカップルメニュー限定でプレゼントが当たるキャンペーンがあることを知ったのが数日前。


 女性カップルラブケーキには『バニティ』

 男女カップルラブバーグには『はしっコぐらし てのりぬいぐるみセット・ガスド限定バージョン』

 男性カップルラブステーキには『ダンベル&腹筋ローラー』


 めちゃくちゃぬいぐるみが欲しいんだけど、私には彼氏なんていう伝説上の生き物なんていない。一人っ子なので兄弟もいない。

 カップル限定イベントをクラスの男子に頼むなんて無理。誤解されるに決まってる。

 ――と、いう訳で。もうすぐ20時になろうかという時刻でマンションの1階エントランスに私はいた。

 昨日はたまたま少し早かったけど、普段の帰宅時間はだいたい19:30~20:30の間って言っていた。


「――都合とごうさん、こんばんわ」


 挨拶すると、あれ? っと驚いた顔の都合さん。ちょっとかわいい。

 こんばんわと挨拶を返してくれる。


「昨日はありがとうございました――はい、ぜんぜん濡れませんでした――いえ、出かけるんじゃなくて……実は、都合さんを待ってました」


 変に意識しちゃうと言い出せなくなるから、ここはこのまま勢いで言っちゃおう。


「――あの! 今度一緒にご飯いきませんか? 昨日のお礼がしたいので――え? 僕でいいのかって? もちろんです! お礼ですから!」


 あ、ちょっと。ドキドキしてきた。

 口実があるとはいえ、男の人を何かに誘ったことは初めてだから。


「――いいんですか? ありがとうございます! ――それじゃ、スマホの番号いいですか?」


 都合さんの番号ゲットしちゃった。


「――それじゃ今度電話しますね!」


 うぅ~、待っててよぉ、ガスド限定はしっコぐらしぃ! 絶対当ててやるんだから!


 それにしても、カップル限定イベントに誘える彼氏でもない男の人なんてそうそういないよね。


 ほんと、都合さんは都合が良い。



 

 ――続――












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

キャンペーンで都合が良い! 維 黎 @yuirei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ