あなたの幸せを祈って

冴木さとし@低浮上

最終話 大事にしてね

 何がいいかなと考えながら私はショッピングモールで商品を物色していた。


 最近では減ってしまった本屋もあった。本を手に取りページをめくり考える。あれでもない、これでもないとひたすら本を手に取り考えて、それをひたすら繰り返す。そんな時間は無駄だとしても、とても楽しいものだった。


 貴金属の専門店も見つけたので店内に冷やかしついでに入ってみた。店内にいるカップルさんにちょっと嫉妬しつつも、あの人も私に贈ってくれないかしらと考える。本当に目移りしないわけがないキラキラとした貴金属。オシャレなものがあったとしても、本と同じでちょっと早いかな? なんて考える。


 かといって私がもらえるとしたら? なんて考えてみると、自然とこみあげる笑みが止まらない。あの人ってそこら辺がほんとに鈍感だからなぁ、とため息もついでにでてしまう。


 いやいや、今日はちゃんと探さないといけない。そんな妄想ばかりしていたらあっという間に時間が過ぎてしまうだろう。

 

 休日だってそんなにある訳でもないんだから、と私は気を引き締めてお店の冷やかしを続ける。お店の人は私のことを『何も買わないお客さん』と思っているのかしら? と考えてしまうけれどそれはそれ。


 貴重なお金を使うのだから私はこれだと思うものを探したい。そのためにこのショッピングモールという場所に来たのだから、冷やかしだとは思わずにご容赦頂ければと思う訳です。


 そんな迷い人の私はぬいぐるみを売っているお店を見つける。ぬいぐるみの触り心地も良い感じ。お値段的にも妥当だろうと私は考える。色々商品をみてサービスの内容も考えて、私はこれにしようと決心した。


 私と仲のいい隣近所のご夫婦への贈り物。生まれてきてくれてありがとう。あなたのご両親はきっとそう思っています。健やかに過ごすあなたの未来に希望と願いを込めて、可愛いぬいぐるみのウェイトドールを贈ります。 



 終

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