ぬいぐるみ使いの繰越さんは今日もだらしない。
山岡咲美
ぬいぐるみ使いの繰越さんは今日もだらしない。
「クマ! スマホ取ってきて!」
トテトテと茶色い毛のモフモフ
モフモフ熊のぬいぐるみは両手でスマートフォンを抱えている。
昨日の夜に声のぬしがお菓子やジュース、巻き髪を試していたヘアイロンやカガミなどを散乱させたローテーブルから持ってきた。
モフモフ熊のぬいぐるみの行く先は
「寒っ!」
女は一度ベッドから出ようと片足だけ床に下ろすが部屋の寒さと床の冷たさを感じ布団の中へと戻す。
『エアコンきれてる? 停電でもした??』
女は布団を頭からかぶり、枕を残して布団の中で丸くなった。
布団と枕はその女が清潔感があると思い買った、真っ白ふかふかお布団と、真っ白大きなふっくら枕だ。
「イヌ! リモコン取ってきて、エアコンのやつだよ!!」
そう言うと女は枕元にちょこんと座っていた、空色のスベスベ
さっきモフモフ熊のぬいぐるみもやられていた。
ポフンッ
空色犬のぬいぐるみは頭をブルブルと震わせ、その短い手で頭をなでて頭がちゃんと付いている事を確認し、短い足で立ち上がる。
そして首輪が後ろ前になっていたので、ちゃんとカタカナで[イヌ]と名前の書かれた札が前になるように整える。
札の汚れを払い、サラリーマンがネクタイをするみたいにだ。
「イッヌッ! はっ・やっ・くっ!!」
だらしないご主人さまがお怒りだ。
空色犬のぬいぐるみは『はぁ』とため息をつく素振りを見せ、しぶしぶローテーブルの上に登ろうとローテーブルのはじに短い足をかけた。
「あっ、クマありがと♪」
だらしないご主人さまはベッドまでやってきたモフモフ熊のぬいぐるみを見ると、丸まって中にいた布団から手だけだし、ピンクや白の大きな花のシールのはられスマートフォンをそれを抱えるモフモフ熊のぬいぐるみごと持ち上げ、枕元にモフモフ熊のぬいぐるみのを座らせると、そのモフモフ熊のぬいぐるみの手からスマートフォンだけ抜き取り布団の中へと持ち込んだ。
「イヌ~~! やっぱそこでつけちゃってーー! 今アタシ忙しいのーーーー!!」
空色犬のぬいぐるみはローテーブルの上でエアコンのリモコンを抱えて、肩を落とす。
ぬいぐるみにとって、小さなボタン操作は苦手とするところなのだ。
ご主人さまは布団の中で丸まりメールのチェックにいそしんでいる……。
「イヌーー! 早くだよーーーー!!」
空色犬のぬいぐるみはリモコン操作には不向きな短い手で『ポフンポフン』ボタンを何回も押す。
ごごごーーーーーー!
エアコンがつき、暖かい風が部屋にまわり始める。
「あっ、イヌーー、温度高めにして♪♪」
空色犬のぬいぐるみは肩から『ガクリ』ローテーブルに崩れ落ち、その両手を『バタン』とローテーブルにつけた。
雑に閉められていた月や星のちりばめられたパープルカーテンの隙間から春になりかけの朝日が床に差し込んでいる。
「げっ! 今日……って、ロボットなんちゃら学??
布団の中で丸まり友達のメールを読んだ[妖怪布団かぶり]がこもった声を部屋に響かせる。
「あの可愛い可愛い理系男子さえいなきゃ工科大学なんて絶っっっっ対!! 受験しなかったのに!!!!」
空色犬のぬいぐるみは以前この部屋に連れ込んで逃げられた若い男を思い出す。
「ロボいらねーーーーーーーー!!!!」
空色犬のぬいぐるみは何度も何度も『ポフンポフン』を繰り返しエアコンの設定温度を上げることに成功した。
ごごごごごごーーーーーーーーーーー!!
「
妖怪布団かぶりは暖まりつつある部屋の中、布団の中で惰眠との決別を決意する。
「やむなし!!!!」
空色犬のぬいぐるみは布団をめくりベッドの上に立ち上がったご主人さまを『いちいちめんどくさい!』と首をかしげて見上げた。
ご主人さまは
モフモフ熊のぬいぐるみがそのご主人さまの勇気を称え『ぽふぽふ』と
魔法のぬいぐるみの事は秘密だ。
ぬいぐるみ使いの繰越さんは今日もだらしない。
ぬいぐるみ使いの繰越さんは今日もだらしない。 山岡咲美 @sakumi
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