第3話 本屋

 ——あれ? なんでわたし、こんな所にいるんだろ?


 少女は困惑する。

 自分は死んだはずだ。

 なのに今、周囲を本棚に囲まれている。そこは本屋、なのだろう。とても簡素だが、こんなに本があるという事は、そういう事だ。図書館にしては狭いし、学校の図書室にも見えない。

 何気なく後ろへ向くと、ガラスの自動ドアがある。しかし、真っ暗だ。

「——そのドアは開きませんよ?」

 先ほど自分が向いていた空間に、店員と思わしきエプロン姿の男が立っている。背が高く中性的な顔立ちだ。

「わたし、本屋さんに用事ないんですけど……」

「いいえ、貴女の本はこれです」

「わたしの?」

 差し出された本を開く。


〝その縄は黒く、熱い。〟

〝落下の先にある物は、熱く、硬く、鋭い。〟

〝燃える口から溢れる涎ほど、傷に沁みるものはない。〟

〝終わらず繰り返す。永遠ではないが。〟


 本を持って少女は、店を出た。

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 本屋。 Y.T @waitii

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