本屋を探して

にゃべ♪

本屋はどこだ?

 私は本屋を探している。ずっとずっと探している。いつから探していたのかは分からない。気が付くと探していた。探さないといけないのだと言う使命感に燃えていた。

 一体あの本屋はどこにあるのだろう。記憶の片隅にこびりついて、どうしても探さずにはいられない。思い出せたら早いのに。どうしても思い出せないでいた。


 きっとどこかにあるんだ。そうでないとここまで気になるはずがない。一体どんな本を売っていたのだろう。どんな内装だったのだろう。名前さえ思い出せれば早いのに、ああ……。

 地元はもう探し尽くした。商店街も、ショッピングモールも、駅前も、郊外にもない。違う書店ばかりだ。


 だからもっと足を伸ばした。都会にも行った。離島にも行った。砂漠にはないか、森の中にはないか。山の上にはないか、遺跡の中にないか――。

 ああ……だけど、どこにも見つからない。


 羽の生えた本屋を見つけた。ひとつ目の本屋にも出会った。見上げるほどの巨大な本屋に遭遇した。豆粒ほどのちっちゃい書店も見つかった。

 けれど、そんなんじゃないんだ。私が探しているのは。私が欲しているのは。


 探して探して世界中を飛び回って、各地の文献を紐解いて、古老から話を聞いて、伝説を確かめて、何度も死にかけて、様々な誘惑に打ち勝って――。

 なのにどこにも本屋が見つからない。そっくりな本屋はあちこちにある。だけどやっぱり何かが違う。何度も騙され続けた。うまい話に身ぐるみも剥がされた。


 私はもう疲れてしまった。寿命と引き換えに悪魔と契約すれば良かっただろうか。もう一歩も動けなくなった私はその場に崩れ落ちる。

 その時、突然目に違和感を感じた私は鏡を見た。そうしたら、瞳の奥にあったんだ。ずっと探していた懐かしい扉が。こんなところに。


 気がつくと、私は本屋の前に立っていた。思い切って扉を開ける。光が広がっていった。レジ前には私が立っていた。

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本屋を探して にゃべ♪ @nyabech2016

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